値上げと値崩れ(6月4日)

2023/06/04 09:35

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有

 「狂乱物価」の言葉が生まれた。1970年代のオイルショックで日本経済は痛手を被る。トイレットペーパーを求めてスーパーに列ができた。高度経済成長の終焉[しゅうえん]とされる▼その少し前に、フォーク歌手・高田渡さんの「値上げ」が話題を呼んだ。値上げを〈ぜんぜんかんがえぬ〉で始まり、中盤は〈なるべくさけたい〉。〈やむをえぬ〉に転じ、〈ふみきろう〉で終わる。親交の深かった詩人の「変化」に曲を付けた。一説には、政治家の発言の変遷をやゆしたとされる。事が決まるまで、どこかのんびりしていると▼最近の値上げは息つく間もない。食べ物に加え、今月から電気料金も。大手企業の賃上げが報じられても、県民の財布は肥えた実感が持てない。家計のやりくりは日に日に厳しくなる。中央銀行は副作用がまとわりつく金融、物価の処方箋をなかなか変えようとしない。人々が思うは「やむをえぬ」か、そろそろ変化へ「ふみきれ」か▼のらりくらりの景色は永田町かいわいの風物でもある。きのうより暮らしを楽にする妙薬はないものか。高田さんは雲の上から忠言しているかもしれない。今度歌うタイトルが「偉いさんの値崩れ」とならぬよう。<2023・6・4>