論説

【県立高特色選抜】見直し視野に議論を(6月7日)

2023/06/07 09:10

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有

 県立高入試の自己推薦に当たる特色選抜は、導入から4年連続で平均倍率が1倍を下回っている。定員割れが常態化すれば、スポーツや文化活動など各校が力を入れたい分野の取り組みが滞りかねない。県教委が近く開く県立中学校・高校入学者選抜事務調整会議などの場で、制度の見直しを視野に課題や対策を洗い出してほしい。

 特色選抜は3月の一般選抜と同日程で同じ学力検査が課され、各校の判断で面接や実技も行われる。2019(平成31)年春までの旧制度は自己推薦に当たるⅠ期選抜の試験が2月と早く、学力検査はなかった。Ⅰ期で合格が内定した生徒の高校入学までの学習意欲の低下が指摘され、特色選抜に改められた。

 全日制特色選抜の平均志願倍率は0・82倍だった初年度以降、0・76倍、0・77倍で推移し、4年目の今春は0・76倍にとどまった。Ⅰ期選抜の最後の4年間が平均1・50倍だったのと比べて低さが際立つ。今春の特色選抜で1倍を超えた学科・コース数は全147の4分の1に満たない35だった。

 県教委は新型コロナ禍で生徒が部活動の実績を自己評価するのが難しかったり、体験入学や高校側の中学校訪問で説明を聞く機会が減ったりしたことが影響したとみる。ただ、1年目は時期的に新型コロナが出願判断を左右したとは考えにくい。要因は他にあるはずで、さまざまな立場の声を幅広く聞き、分析するべきだ。

 旧制度は、Ⅰ期選抜で不合格でも同じ学校か別の学校のⅡ期選抜を受験することができた。現制度は特色、一般各選抜を併願できるが、志望校は1校に絞らなければならない。併願の場合、学力検査に加えて面接対策などに時間を割くことになる。このため、生徒が特色選抜に関心を示しても、負担を考慮して一般選抜のみの出願を勧める中学教員もいるという。

 学力に応じた「行ける学校」ではなく、得意分野を生かせる「行きたい学校」を選ぶ環境づくりは欠かせない。自己推薦で受験に挑む意欲を高められるよう試験の日程や方法、併願の在り方など、あらゆる面で検証してもらいたい。各校の特色を磨き上げるためにも、制度は見直す必要がある。(渡部育夫)