論説

【南相馬の連携協定】地元産業の活性化に(6月9日)

2023/06/09 09:43

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 南相馬市と市内への進出企業が連携協定を結ぶ動きが相次いでいる。部品供給などを通じて地元企業との取引を活性化させ、地域全体の技術力向上につなげてほしい。

 国家プロジェクト「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」を推進するため、市は2017(平成29)年から進出企業と連携協定を締結してきた。構想の主要プロジェクトのロボット・ドローン、宇宙・航空開発、農業に関わる業種で19社に上る。大半の協定に開発や実証試験を市内で行う内容が盛り込まれている。福島ロボットテストフィールド(ロボテス)が立地する地の利を生かし、順調に協定の数を増やしてきた。

 既に実行に移している事例も複数ある。ロボテスで研究を重ねてきたベンチャー企業は、隣接する復興工業団地や、市が開設した賃貸事務所施設「南相馬市産業創造センター」などに開発拠点を開設し、地元の製造業者に部品を発注する関係を築いている。

 相双地方は機械部品加工の中小企業が集積し、多様な注文に応えられる下地が整っている。進出企業への部品供給は協定の項目に据えられている場合が多く、進出側も地元側との取引を重視している。研究段階の取り組みが具現化されれば発注の規模が大きくなり、地元産業の活性化は一段と進むはずだ。

 安定的に部品を供給するには、地元企業の技術向上が欠かせない。原町商工会議所と福島大地域未来デザインセンターが市内の商工業者を対象にした経済状況調査によると、福島イノベーション・コースト構想の効果として、回答した原町区の製造業50社のうち10社が「新産業での製品開発や受注の拡大」を挙げた。

 一方で、同数の10社が「イノベがよく分からない、実感できない」、6社が「特に期待していない」と回答していた。調査報告は、イノベ構想が想定する産業の水準と市内の企業の技術力が乖離[かいり]している現状を課題の一つに挙げている。

 県のハイテクプラザ南相馬技術支援センターがロボテスに入居している。技術の相談や開発支援などを担うセンターを地元企業が積極的に活用し、進出企業との協力体制をこれまで以上に充実させてもらいたい。(平田団)