柳美里さんインタビュー「大きな交流のきっかけに」 31日から常磐線舞台芸術祭

2023/07/21 09:38

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有
舞台芸術祭に込めた思いを語る柳さん
舞台芸術祭に込めた思いを語る柳さん

 31日から始まる「常磐線舞台芸術祭2023」のプログラム・ディレクターを務める福島県南相馬市小高区在住の芥川賞作家柳美里さんは20日、区内の劇場「Rain Theatre(レインシアター)」でインタビューに応じ、「舞台芸術を通じ、分断された地域に大きな交流を生み出すきっかけをつくりたい」と意気込みを新たにした。

 ―常磐線舞台芸術祭にかける思いは。

 「東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後に南相馬市に通い、移住して地元と向き合う中で何ができるかずっと考えてきた。人間は根源的に交流が必要であり、舞台芸術の力で交流による新たな糸を引き出し、その糸で大きな布ができればいいと考えている。芸術祭を通じ、この地に通ってみたい、住んでみたいと思えるようなきっかけにしたい」

 ―常磐線沿線を中心とした広域的な場所で開催する狙いは。

 「津波や原発事故で分断された常磐線は2020(令和2)年3月に全線再開したが、その間、さまざまなラインが引かれ、人々は分断された。再びつなぐラインは何かと考えた時に常磐線が浮かんだ。東京や仙台につながっているということも思ってほしい」

 ―プレ公演する「JR常磐線上り列車―マスク―」で表現したいことは。

 「原発事故や新型コロナ禍で、子どもたちが口には出せなかったつらい思いをどうしたら伝えられるか、みんなで探りながらつくっている。出せなかった声を大切に扱いたい。プレ公演では制作や演出の過程を公開しており、演劇を身近に感じてもらいたい」