会津大は27日、宮崎敏明理事長兼学長(66)が執筆した論文8本で二重投稿と自己盗用の不正行為が確認されたとして31日付で辞任すると発表した。学内手続きを経ずに国への補助申請を進めたことも明らかにした。同大の理事長選考会議が辞任を勧告し、宮崎氏が辞表を提出した。理事長兼学長代行に8月1日付で趙強福(ちょう・きょうふく)副理事長兼副学長(62)が就く。福島県によると、会津大と福島医大が公立大学法人に移行した2006(平成18)年度以降、大学トップが任期途中で辞任するのは初めて。
■代行に趙副学長
趙氏らが記者会見して発表した。会津大によると、二重投稿があったのは2008年から2012年までに発表した論文4件。先行論文と比較した結果、過去の論文と同じ内容だった。自己盗用があったのは2010年から2016年までに発表した論文4件。内容に新規性はあるが、過去の論文からの引用であると示していない部分があったという。文部科学省のガイドラインで二重投稿や自己盗用は不正行為に当たるとされている。
宮崎氏は二重投稿や自己盗用と認定された論文について、出版社に取り下げや訂正を申し出ている。昨年2月にも論文4本の自己盗用が明らかになっていた。
学内手続きの不備について、宮崎氏は大学院の組織・定員変更や学部の定員増加に関する文部科学省の補助事業に申請する際、定款に定められた学内手続きを経ていなかった。5月23日に申請しており、県から指摘を受けて6月8日に取り下げた。宮崎氏は「学生や卒業生、支援者、県民に迷惑をかけて大変申し訳ない」と話しているという。
同大は7月5、10の両日に学内外の委員で構成する理事長選考会議を開き、解任に相当する職務義務違反には該当しないが、宮崎氏個人と法人代表としての責任は免れないとして辞任を勧告した。
県私学・法人課の担当者は「理事長兼学長の辞任は設立団体である県として非常に遺憾。会津大は事実を真摯(しんし)に受け止め、信頼回復に努めてほしい」と話した。
宮崎氏は新潟県出身。電気通信大大学院修士課程修了、東京工大で博士号取得。日本電信電話公社(現NTT)を経て2005年に会津大教授に就任した。2020(令和2)年4月に理事長兼学長に就いた。
趙氏は中国出身。東北大大学院博士課程修了。1993年から東北大助教授。1995年に会津大准教授となり、1999年から教授。2020年4月に副理事長兼副学長に就いた。
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宮崎氏の任期は2024年3月までで、年内に次期理事長予定者が決定される予定だった。会津大は「速やかに理事長選考会議を開催する。通常3~4カ月で決定していたが、時間を要するかもしれない」と説明した。