
27日に発表された会津大の宮崎敏明理事長兼学長(66)の辞任の大きな理由は、執筆した論文に二重投稿と自己盗用の不正行為があったためとされる。文部科学省が作成したガイドラインで不正行為とされているが、どの程度の内容が不正とされるかは具体的に記されていない。論文の発表先の出版社や学会ごとに基準が定められており、研究者は不正防止のため自身による徹底した確認が必要となる。
二重投稿は自身の過去の論文と著しく重なる内容を別の論文として発表する行為。自己盗用は自身が執筆した過去の論文の文章や図表を適切に引用せずに掲載する。同省によると、2015(平成27)年度から2022(令和4)年度までの間に二重投稿13件、自己盗用5件が全国で認定されている。このうち自己盗用1件は、2022年2月に明らかになった宮崎氏の論文だった。
今回、宮崎氏からの申告を受け、執筆した54件の論文を学内外の委員で構成するグループが調査した。論文発表当時の学会や学術誌の規定に基づいて調査し、不正行為と認定した。
同省研究公正推進室の担当者は「研究活動のコミュニティーの自立性も保たなければならない。それぞれの発表先のルールに従ってもらいたい」と語る。
会津大は過去の論文との重複箇所を確認するツールを昨年4月に導入した。今後はツールの使用徹底を呼びかけるとともに、研究倫理に関する研修を行い、教授らの意識醸成を図る。佐藤等事務局大学担当次長は「それぞれの対策の有効性を検討し、必要に応じて見直しを行っていく」と話した。大学の信頼回復のため、実効性のある再発防止策が求められる。