
福島県いわき市の県水産会館で22日に行われた西村康稔経済産業相と県漁連幹部との会談。30年はかかるとされる海洋放出と廃炉を担う国と東京電力に対し、県漁連の野崎哲会長は緊張感のある対応を求めた。出席した漁業者も廃炉を願う思いは同じとした上で「数十年、緊張感を保つのは並大抵ではない。国は全責任を持ってほしい」と長期的な覚悟を持つようにくぎを刺した。
県漁連幹部や国、県の関係者ら約40人が参加した会談は冒頭を除いて非公開で行われた。終了後、報道陣の取材に応じた西村氏が強調したのは、復興と廃炉の完遂が国と漁業者共通の目標であるという点だ。
西村氏は、会談の中では「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」とした国と東電、県漁連との約束についても議題に上がったと説明。その上で「関係者から一定の理解は得られた。また、漁業者と国、東電は廃炉と復興という共通目標に向かって進んでいる」との見解を示した。
一方、野崎会長によると、出席した漁業者からは「国が最後まで責任を持つ」という国の姿勢を、覚書を交わして記録に残すべきだとの意見も出たという。野崎会長は「閣議決定の内容が公文書として残る。それを(覚書に代わる)位置付けとしたい」と述べた。放出に反対の立場を堅持しつつ、「漁業者も漁場のモニタリングなどに積極的に協力する」として放出以降の海の状況の推移を注視する姿勢を強調した。
「西村氏の説明を聞いても、反対の立場は変わらない。変わるわけがない」。いわき市漁協の江川章組合長は会談を終え、大きなため息をついた。これまで風評被害への懸念を繰り返し伝えてきた。「放出には反対だ。関係者は皆怒っている。(政府が)本当に何を考えているのか分からない」と憤りを隠さなかった。