
磐梯朝日国立公園のエリアにある福島市の土湯温泉と高湯温泉が環境省の「ゼロカーボンパーク」に東北で初めて認定された。温泉熱を利用した発電や竹製アメニティーの導入などを通じて、持続可能な観光地づくりにつなげる。環境に配慮した旅行は観光客の注目を集めつつあり、地域活性化にも一役買いそうだ。(福島民報社報道部・佐々木春奈)
■脱炭素化を先行
環境省による認定制度は、2050年までに二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出量を実質ゼロにする政府目標に向け、2021(令和3)年に始まった。国立公園のうち、再生可能エネルギーの導入やプラスチックごみの削減など、先行して脱炭素化に努めていることが主な要件となる。
認定された取り組みは環境省のホームページなどに掲載される。広い発信につながるため、住民や観光客らの環境への意識が高まり、活動への協力も得やすくなると期待される。
土湯、高湯両温泉の登録は全国で12番目。近隣では尾瀬国立公園の尾瀬かたしなエリア(群馬県片品村)や、日光国立公園の塩原温泉・板室温泉地区(栃木県那須塩原市)などが認定されている。
■「避けて通れない」
土湯温泉では温泉熱を利用したバイナリー発電やオニテナガエビの養殖、高湯温泉では廃湯を活用して凍結を防ぐ「無散水消雪道路」の活用などにそれぞれ取り組んでいる。温泉地ならではの地域資源を生かした観光地づくりに努めている。
旅館では、くしや歯ブラシなどのアメニティーの素材をプラスチックから竹に切り替える動きも進む。高湯温泉観光協会の遠藤淳一会長によると、最近ではマイ箸やマイボトルを持参する観光客も増えているという。「気候変動による影響が拡大する中、環境に配慮した取り組みは観光地でも避けて通れない」とし、「やれることから少しずつ進めたい」と話す。
■観光×環境に注目
2050年カーボンニュートラルに向けた意識は国内外で高まってきており、環境に配慮した旅行商品も注目を集めている。大手旅行会社JTBでは、旅行でのCO2排出量を実質ゼロにできる旅行商品を企業や団体向けに販売する。県は今年度から県内市町村と連携して観光と植樹体験を組み合わせたモデル事業を展開し、県民らの環境保全への意識醸成を加速させる。
土湯温泉観光協会の加藤貴之会長は「環境に配慮した旅行に注目が集まる中で、認定を受けた意味は大きい」と強調する。「地域と連携して持続可能な観光地づくりへの取り組みを一層推進し、地域活性化にもつなげていきたい」としている。