JR只見線が全線再開通し、10月1日で丸1年を迎える。復活直後の大混雑はなくなったとはいえ、引き続き観光目的で訪れる多くの乗客の姿が見られる。県の企画列車や乗車付きの観光周遊バスの予約も好調だ。1年間の利用者の動向や経済効果などを検証し、一層の利用増と観光誘客につなげるよう求めたい。
県によると、再開通した会津川口(金山町)―只見間の2022(令和4)年度の1日当たり利用者数は79人で、新潟・福島豪雨で被災し、不通になる前の2010(平成22)年度の49人を上回った。今年4月以降の利用者数はまとまっていないが、県は相当数の乗車があるとみている。利活用を推進する上で、利用者の動向把握は欠かせない。JR東日本をはじめ関係機関が連携を密にし、分析を進める必要がある。
企画列車は、昨年に続き10月と11月の8日間にわたり、会津若松―只見間で往復運行される。会津鉄道(本社・会津若松市)の観光列車「お座トロ展望列車」を走らせる。各日とも平日にもかかわらず最少催行人員の30人を上回り、全日程での運行が決まった。予約開始から5日間で満席となった昨年ほどの勢いはないが、秋の絶景路線と日本料理店「分とく山」の野崎洋光総料理長(古殿町出身)監修の「わっぱ弁当 結」が楽しめるとあって人気は根強い。参加者の要望を聞きながら、内容に磨きをかけてほしい。
只見線の乗車を組み入れた県委託事業の観光周遊バスの利用も増えている。利用者数は全線再開通前の2021年度は80日の運行で約700人だったが、2022年度は100日の運行で約1500人と倍増した。只見線の運行本数が限られる中、一部区間を乗車する観光周遊バスが定着すれば、列車の利活用だけでなく、奥会津へのさらなる経済波及効果が期待される。
一方で、只見線の利活用に充てる企業版ふるさと納税が伸び悩んでいる。2021年度は6件あったが、2022年度は1件、今年度は15日現在、2件にとどまっている。寄付金は企画列車を運行したり、周遊ルートを整備したりする上で貴重な財源となる。県外に本社、県内に支社がある企業などに協力を呼びかけ、官民挙げて盛り上げを図るべきだ。(紺野正人)