今を生きる 原町・相馬農、連合チームで出場 高校サッカー県大会

連合チームを組んで県大会に出場する原町高、相馬農高の選手=相馬高グラウンド

 晴れ舞台でサッカーができる-。6日の全国高校サッカー選手権県大会1次大会組み合わせ会議で、原町高と相馬農高は連合チームとしての出場が了承された。東日本大震災や東京電力福島第一原発事故の影響で新入部員が集まらないなど部員が確保できず、諦めていた県大会。出場を断念した被災校の思いも胸に、キックオフを待ちわびる。
 6日夕、原町高と相馬農高のサッカー部員は相馬市の相馬高グラウンドで初の合同練習に臨んだ。向き合い、あいさつをする表情は緊張でこわばっていた。連合チームは原町7人、相馬農8人の計15人。この日は13人が参加した。
 ゲーム形式の練習に臨んだ部員は開始当初、ぎこちない動きも見られたが、次第に熱が入り、互いに掛け合う声も大きくなった。1時間半に及んだ初日の練習終了後、メンバーは確信した。
 みんなサッカーが好きなんだ。このメンバーなら戦える-。
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 相馬農高の主将佐藤翔(かける)君(3年)は震災後、3年生として最後の県大会への出場を諦めた。震災や原発事故の影響で新入部員が思うように集まらない。部員は8人だけで、1人は靱帯(じんたい)を切るけがをしていた。
 「自分は出られなくても、来年の大会に向け、チームをしっかり育てなければ」。悔しさを胸にしまい込み、主将としてチームを束ねた。6月、加藤清士監督に聞かれた。「大会に出たいか。連合チームで出られるかもしれない」。部員全員が代わる代わる叫んだ。「先生、出たいです」
 原町高は震災の影響で3年生全員、2年生の一部の部員が転学した。部の取りまとめ役の飯島和樹君(2年)は大会出場が見通せない中、新学期を迎えた。「来年になってメンバーがそろうまで頑張ろう」。気持ちを切り替えようとしたが、どうしても諦め切れない。「どんな形でもいい。大会に出たいんです」。橘内聡志監督に掛け合った。
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 連合チームは現在、主将も決まらず戦略も白紙だ。遠征費捻出など課題も多い。しかし、試合ができるという喜びが不安を上回る。連合チームの規定がなく、優勝しても全国大会に出場できないが、それも問題ではない。
 「自分たちが勝利することで、家族や被災地に元気を伝える」と佐藤君。飯島君も「被災地のチームでもやれることを示したい」と意気込む。「生徒の生き生きとした笑顔が何より復興への希望を感じさせてくれる」。組み合わせ会議に出席した橘内監督には充実感が満ち満ちていた。

■「僕らの分活躍を」 出場断念の生徒
 震災のためチームがばらばらになり、大会に出場できない高校もある。浪江高は部員11人のうち8人が他県に転校し、休部に追い込まれた。
 主将の勝山大生君(3年)は二本松市の安達高にあるサテライト校に通う。小学3年から始めたサッカーに未練は残り、サッカー部のある会社を就職先に希望している。「もし無理でも、地域のクラブに入りたい」と再びピッチに立つ日を思い描いている。
 原町高と連合を組んだ相馬農高とは公式戦などで対戦し、主将の佐藤君とは何度もサッカーについて語り合った仲間だ。「僕たちの分まで活躍して」。浪江町の自宅から持ち出したスパイクを見つめ、エールを送った。
 双葉高も震災前に13人いた部員の大半が転学し、他校で競技に打ち込む。瓜生康弘教頭は「震災さえなければ、みんな双葉高のチームとして出場できたはずなのに...」と心情を推し量った。