放射線との戦い(2) 除染 自分たちで とどまるため悩み、動く

パセオ通りで街路樹の根元の土を取り除く商店主ら=6月22日

     3月の売り上げは前年の半分だった。
 震災から100日以上たっても客足は戻らない。福島市のパセオ通りを歩く人はまばらだ。陶器店を営む岡崎俊資さん(67)は放射線を気にして出歩く人が減ったのではないかと感じている。
 創業60年余り。細やかなサービスを心掛け、地域の人たちに親しまれてきた。旅館などの取引も多い。この土地を離れることは考えられない。「安心して歩ける街を取り戻したい。何とか放射線量を下げることはできないか」。学校の除染は動きつつあるが、商店街や一般の住宅まで行政の手は回ってこない。通りに人を呼び戻すには自分たちで動きだすしかなかった。
 6月下旬、通りの仲間約40人と植え込みの表土を取り除いてみた。建物や路面を高圧洗浄機で洗い流す作業はできなかったが、地表の放射線量が4分の1の0.32マイクロシーベルトに減った場所もあった。
 問題は削り取った土の処分だった。四トントラック1台分。事前に市に相談したが引き取ってはもらえなかった。市は「土を払い落とした芝や刈り取った草に限り、可燃ごみとして受け入れる」との姿勢だった。
 助けてくれたのは放射線低減の問題に独自に取り組み、県内各地の除染作業を支援している同市山口の常円寺住職阿部光裕さん(47)だった。岡崎さんらの話を聞き付け、寺の敷地に仮置きしてくれた。
 阿部さん自身、男の子3人の親だ。放射性物質を含む土を引き取るには、心配もある。近所には健康に影響を及ぼすレベルではないことなどを丁寧に説明し納得してもらった。管理にも注意を払い、近々穴を掘って仮埋設する考えだ。「今しなければならないのは除染。本来は国が先頭に立ってやるべきだ」。阿部さんは厳しい口調で国や自治体の対応の遅さを批判する。

      行政もどう対応すればいいのか悩んでいる。
 福島市は小中学校の校庭の表土除去を優先的に進めている。今後は通学路の除染にも取り掛かる予定だ。市災害対策本部の担当者は「商店街や住宅地でも取り組みたいのはやまやまだが、手法や土砂の処分法が確立していない。市民の要望は痛いほど分かるのだが...」と明かす。
 県は今月中に生活圏の線量低減に向けた清掃法など除染対策を示すとしている。
 福島市大町で眼鏡店を営む薮内義久さん(32)は4月下旬、市内森合にある自宅の庭の土を削り取った。少し作業しただけでごみ袋4つ分になった。「この土をどうするか...」。持っていく場所はない。結局途中で断念した。「地面に手を突いちゃだめ」。庭に出た4歳の長男をつい叱った。「どうしてこんなふうになっちゃったの?」。長男の言葉が胸に刺さった。店の周辺の洗浄も考えたが、近所や下流の下水処理場近辺の人に放射性物質を押し付けるような気がしてやめた。
 「除染を進めるなら地域が一丸となり、県外からもボランティアを募って長い期間で取り組まなければ意味がない」と考えている。散歩やジョギングの感覚で毎日効果的に除染に取り組めないか。友人たちと構想を練っている。
 「みんな、1日も早く元の生活に戻りたいだけなんだ」