放射線との戦い(5) 内部被ばくあるか 鈍い行政の対応に不満も

放医研で行われたホールボディーカウンターによる検査の様子。写真は職員=6月27日

    内部被ばくは外部被ばくより危険とみる研究者がいる。
 外部被ばくは放射線量の高い場所を避ければ減らせるが、内部被ばくは呼吸や食物として体内に入った放射性物質が直接臓器などに影響を与えるため危険度が大きいのだという。
 チェルノブイリ原発事故で子どもに甲状腺がんが多発したのはヨウ素を含む牛乳による内部被ばくが大きな原因と考えられている。今回、牛乳は速やかに規制された。
 県は6月末、全県民を対象にした健康調査の一環として先行地域を対象にした内部被ばく検査を始めた。千葉市にある放射線医学総合研究所(放医研)で検査を受けた1人の熊田和江さん(35)は浪江町請戸から避難し、現在は福島市の仮設住宅に家族7人で生活する。転々とした避難所の中に線量の高い場所があったと知り、不安だった。
 体表面の検査では異常なく、ホールボディーカウンター(WBC)という機器による内部被ばく検査結果は1カ月後に通知すると言われた。「私が何もないと分かれば家族も安心。検査は今後も継続してほしい」と感じている。

    早くからWBCの検査を求めていた団体がある。
 飯舘村の住民団体「負げねど飯舘!」は5月中旬、国や県に対し、村民の内部被ばく測定を要望した。「1日でも早くと思ったがいい返事はもらえなかった」と会員の愛沢卓見さん(39)は振り返る。
 平成11年に東海村で起きたJCO臨界事故の後、2次被ばく医療機関にWBCを設置することになり、福島医大にも1台置かれた。今回の事故後、訓練以外では初めて原発周辺の遺体捜索に当たった警察官ら公務従事者を対象に使用した。県は概要を明かさないが、問題となる人はいなかったとみられる。累計20万人を超すスクリーニング実施者のうち除染を経てなお内部被ばくを測定すべき基準を超える県民はいなかった。
 愛沢さんは原発事故直後、職員として勤務する村内の小学校で南相馬市からの避難者支援に当たっていた。「当時は毎時40~50マイクロシーベルトあったと思う。100マイクロシーベルト超の場所の住民もいた。もちろん子どももいた。誰かが内部被ばくを調べるべき」と思った。
 医大には断られたが、放医研が受け入れる可能性があると分かった。5月末の検査では「基準値以内だから大丈夫」と言われた。後日渡されたデータは詳細なものではないため不満だ。事故から3カ月以上経過していたため、検出はセシウムだけ。半減期の短いヨウ素は出なかった。
 愛沢さんらは行政の鈍い動きに、きちんと被災者に向き合っていないと不満を感じている。「最後の頼りは国なのに、手応えの無いブラックボックスのよう」だと。
 鳥取県から本県に貸与されたWBCによる内部被ばく検査の受け付けを南相馬市が始めた6日、市民からの申し込みは1日だけで184人に達した。安心を求めて検査を望む県民は多い。