「適地適作」で農再生 汚染地図の作成を

チェルノブイリ原発事故で被害を受けたベラルーシ、ウクライナ両国は、農地の汚染度合いに応じて農作物を選び作付けするなど農業再生に向けた取り組みを進めている。
福島調査団は、ベラルーシのゴメリにある国立放射線学研究所を訪問した。農作物への放射線の影響を調べる拠点施設で、上院議員で所長を務めるヴィクトル・アベリン氏は「福島でも農地の汚染地図を作るべきだ」と提案した。
研究所は農地に含まれるセシウム、ストロンチウム、プルトニウムなど放射性物質の濃度を調べ、汚染具合を示す地図を作成している。これを基に、それぞれの地域で作付けする農作物を選ぶ。
濃度の高い農地では、オイルにする菜の花、ウオツカの原料となる小麦など加工品用の作物を作る。製造過程で薬品により濃度を下げる対策も行っている。汚染の度合いが低い場所では、生食用のジャガイモやキャベツなどを作るよう農家を指導する。いわゆる「適地適作」の自衛策だ。
ベラルーシでは原発事故後、農家の若者の国外移住が相次ぎ、過疎化が進んだ。政府は人口流出を防ぐため、汚染された土地でも農業を続けられる方策を懸命に模索し、見た目にも分かりやすい汚染地図に基づいた営農を普及させてきた。
アベリン氏は「放射性物質の人体への影響を極力、抑える取り組みと、それを分かりやすくアピールすることが重要だ」と指摘する。
ウクライナもベラルーシ同様、放射性物質の影響を受けにくい農業の推進に力を入れてきた。首都キエフの市場には、国が定めた基準値を下回る新鮮な果物や野菜が所狭しと並ぶ。
本県の農業再生を目指し調査団に参加したJA新ふくしまの菅野孝志専務は「農地の放射線量を把握し、土地に応じた作物を研究していくことが必要になる」と述べ、地図作成に関心を示した。
本県の農地の汚染地図作成を震災後から計画してきた福島大経済経営学類の小山良太准教授は「自身の考えに間違いなかったことを確信した。福島大が中心となり、本県農業の再興に向けて研究を進めていく」と強調した。(本社報道部・渡部 純)