(4)汚染度別に農地活用

アベリン所長(左)の説明を受ける団員=ゴメリ市の放射線学研究所

 チェルノブイリ原発事故で外部放出された放射性物質のうち、3分の2がベラルーシの国土20万8千平方キロに降り注いだ。農地の約半分が汚染され、2650平方キロが使えなくなった。

 政府は平均11ヘクタールを一区画とした汚染地図を作り、汚染状況にあった農作物を栽培している。福島市でキュウリを栽培する農家八巻和夫さん(66)はゴメリ州モズィリ地区の農場で「広い土地ならできるが、日本では難しいかも」とつぶやいた。

 ベラルーシは国営農場「ソフホーズ」で大規模農業を展開する。政府は事故後、農地の除染を試みたが、対象地域は広大で経費が掛かる割に、効果が少なく除染を断念。汚染の度合い別による農業展開に政策転換した。汚染度が高い農地では飼料用の野菜、低い農地では食用の野菜−と作り分けしている。

 土壌の汚染状況は定期的に調べ、区分けは数年ごとに見直す。汚染が深刻な地域でも段階的に農地活用し、将来像も示している。八巻さんは「今は汚染がひどくても数年先の計画が分かれば、希望を持ちながら営農に取り組める」と評価した。

 ゴメリ市にある国立放射線医学研究所は汚染地域での農畜産物の影響を調べている。「ここには26年間、私たちが蓄積したデータがある」。アべリン・ビクトル所長は胸を張った。

 土壌のデータを入力すると、汚染の度合いによってどんな作物がどのような状況で育つか分かるシステムを構築した。「苦しむ日本のため、この知識を生かしたい。いつでも声を掛けてほしい」と語った。

 JA新ふくしまの今野文治さん(44)は「狭い日本の農地に、そのまま利用できるどうかは分からないが、長年の知識は貴重なデータ」と話し、蓄積された経験に期待を寄せた。(本社報道部・江花 潤)