復興への闘い 震災3年の現実(1)第1部 市町村の苦悩 矢面に立つ職員 除染、丁寧さか速さか

仕事納めの日の夕方も、市民や除染業者への電話応対に追われる福島市除染推進課。除染作業を始めて以来、変わらない光景だ=平成25年12月27日

 福島市役所西側のプレハブ庁舎に職員の声が響く。除染推進課の1人は除染に不満を持つ市民への説明、別の職員は除染業者への電話対応に追われていた。仕事納めの日の平成25年12月27日午後5時。顔には疲労感が深く刻まれていた。
 東京電力福島第一原発事故から2年10カ月近くたつ今も、要望、苦情は絶えない。丁寧な除染を前面に出す市の方針と、迅速さを求める市民。「良かれと考えるわれわれの方法がなかなか伝わらない」。正月休み中の課長の荒井政章(54)は大きな隔たりを埋め切れないもどかしさを感じている。仕事始めは6日だ。「除染との闘いがまた始まる」

 毎日10件程度寄せられる苦情は二極化している。
 「時間が多少長引いてもいい。線量ゼロを目指して作業してほしい」「思ったより線量が下がっていない。もう一度必要だ」。除染の「徹底」を求める声は23年10月の作業開始後から続く。
 一方で「福島市はスピードが遅い」「伊達市や郡山市のように効率的にやってほしい」との訴えが増えている。福島市の住宅除染は完了するまで1戸当たり4~6日かかるが、他の市町村の中には工程が異なり2~3日で終えるところもある。
 住宅除染で福島市は、屋根から雨どい、外壁、地面までを対象とした。国が放射線量の比較的高い地域を想定した手法だ。郡山、伊達両市は線量が高くなりやすい雨どいや地面を重点的に除染し、作業の効率化を図っている。「全てを除染していては時間ばかりかかる。放射性物質の自然減衰を考慮すれば、簡素化してもいいんじゃないか」。市民から、福島市の方針に疑問を投げ掛ける声も上がる。
 「しかし」と荒井は思う。「市民の安心感を優先して徹底した除染を選んだ。今考えられる最高の方法のはずだ」。20ページにわたる市独自のマニュアルを手に自負する。

 環境省は除染の考え方をまとめた「除染ガイドライン」を23年12月に示した。除染方法の選択、住民への説明責任は市町村に委ねられた。参考になる資料は約200ページに束ねられた手引き1冊しかない。市の住民説明会にも環境省職員の姿はない。「比較的放射線量が高い国の直轄除染地域以外は市町村が担うため」(環境省)と一線を引き、市からの参加の求めに応じていない。
 国の実務の手助けが少ない中、知識、経験の乏しい市職員の説明にどう説得力を持たせるか|。除染推進課の職員18人は全員、放射線取扱主任者の資格を取得。専門知識を身に付けて対応している。市内約9万5000戸全ての除染実施を掲げ、170回以上にわたり市民に除染計画を説明してきた。
 市の住宅除染の完了戸数は25年12月1日現在、約2万3300戸、進捗(しんちょく)率は約25%にとどまる。月に約900戸ずつ終えた計算だ。終了目標に掲げる28年9月までに完了するには単純計算で毎月2100戸ずつ終えなければならない。荒井は「思うように進んでいないのは事実」と認める。「単純に早い、遅いだけの問題では片付けられない」と強調するが、住民感情とのはざまで思いは揺れている。
 除染の徹底と迅速化。市民と国、県の間に立つ市職員の肩に2つの命題が重くのしかかったまま迎えたのが、25年11月の市長選だった。


 除染や仮置き場確保、中間貯蔵施設設置などの課題が山積したまま、東日本大震災と原発事故からの復興への歩みは丸3年を迎える。市町村は国、県と住民の間で迷い、葛藤しながら現実と闘っている。施策と住民の要望との温度差も出ている。行政が抱える問題を追う。(敬称略)