(4)再生エネルギー 選択方式で太陽光普及 節電へ省エネ家電助成

ジュネーブ州で電力を供給するジュネーブ産業公社。駐輪場の屋根にまで太陽光発電のパネルが取り付けられていた

 スイス西部に位置する人口約47万人のジュネーブ州。州内の約25万世帯に電力を供給しているのがジュネーブ産業公社(SIG)だ。公社の周辺には太陽光発電のパネルが目立ち、駐輪場の屋根にまで取り付けられていた。
 ジュネーブは、原発建設反対運動などを受け、1970年代に原子力で発電された電力は供給しないことを国民投票制度で決めている国内でも異色の州だ。公社が昨年1年間に供給した電力の主な内訳は、水力が86・4%、太陽光発電を中心とする再生可能エネルギーが6・8%、石油・ガスが6・5%で、原子力は含まれていない。
 公社は国内に先駆け太陽光発電を中心とする再生可能エネルギーに力を入れてきた。2004年には、わずか1・3%だったが、約10年で5倍に増えた。逆に石油・ガスは14・0%からほぼ半減した。
 再生可能エネルギーの普及を後押ししたのは、2002年に採用した「電力選択方式」だ。利用者は、使用する電力を(1)100%水力(2)水力80%と再生可能エネルギー20%(3)水力60%と再生可能エネルギー40%(4)100%再生可能エネルギー-の4つから選べる。(4)の場合、他に比べて電気料金は割高になるが、再生可能エネルギーへの関心の高まりから、選択する利用者は多いという。
 環境総合部長のイブ・ト・シーベンタルさんは「ジュネーブに住む人々の社会に貢献したいという思いが数字に表れている」と強調した。
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 公社は2007年から「エコ21」と呼ばれる節電プログラムもスタートさせた。家電製品などを省エネ製品に買い替える家庭などに10万円(1スイスフランを100円で換算)を助成し、電気料金を1キロワット時当たり5円高く支払ってもらう取り組みだ。
 公社の試算では、年間0・5%節電でき、家庭などでは年間30万円の電気料金が節約される。市場には20万円が流れ、経済波及効果も期待されるとしている。
 これまでに5万人が参加し、助成費用は50億円に上る。現在、ジュネーブ州立大学と連携して結果を分析しているが、公社の担当者は「スイス全体では電力需要が増えているが、ジュネーブでは減少傾向にある」と成果に胸を張った。
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 東京電力福島第一原発事故を受け、スイス政府が昨年9月に閣議決定した「エネルギー戦略2050」では、脱原発のため、国内の電力需要を2050年には1970年とほぼ同じレベルまで減少させる目標を掲げる。
 連邦エネルギー庁は、太陽光やバイオマス、風力などの再生可能エネルギーの導入に力を入れるとともに、火力の増設や電力の輸入も視野に入れる。一方で、省エネ製品の普及などでエネルギー効率を高めるとしている。
 だが、現在、国内の発電量の約40%を原発で賄っている。依存度は、フランスを除き世界でも高い方だ。先進的な取り組みをしてきた公社の幹部は言う。「原発の段階的な閉鎖による需給ギャップをどう埋めるか。とても大きな挑戦になる」(本社報道部副部長・紺野 正人)

※ジュネーブ産業公社 ジュネーブ州が55%、ジュネーブ市が30%、州内のその他の市などが15%を出資している。公社の発電量は供給量の25%で、それ以外は発電会社などから購入して供給している。電気の他、ガスや上下水道、ごみ処理などの公共サービスも手掛け、職員数は1700人。民間企業と同じ経営形態で、事業収入の中から毎年1~2億スイスフランを設備投資に回している。収入の半分は電力事業。