データで見る 東日本大震災・東電福島第一原発事故

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福島の今

2022 福島の今
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福島県内推計人口

福島県における出生数と合計特殊出生率

福島県内の空間放射線量の推移

◆福島県環境放射線モニタリング・メッシュ調査結果等に基づく県全域の空間線量率マップ

世界の都市との放射線量比較

出典:環境省ホームページ ( https://www.env.go.jp/chemi/rhm/r1kisoshiryo/r1kiso-02-05-05.html

避難区域

帰還困難区域のうち6町村 復興拠点、順次解除

 東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域のうち、福島県内6町村に設けられた特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示は2022年6月以降、順次解除されている。解除された町村では復興に向けた新たなまちづくりがスタートした。少しずつ住民が帰還を始めたが、生活インフラの整備は追い付いていない現状がある。今後、生活環境の向上を図る取り組みが進められる。

 福島県葛尾村では2022年6月12日、村唯一の帰還困難区域となっていた野行地区で、復興拠点の避難指示が解除された。1日現在、居住しているのは1世帯1人。野行地区はかつて農業が盛んだった。営農再開に向け、地元の生産組合や営農組合が取り組みを進めている。

 福島県大熊町ではJR大野駅周辺など、かつての町中心部を含む復興拠点の避難指示が2022年6月30日に解除された。2月1日現在、27世帯36人が生活する。駅西側には産業交流施設と商業施設の整備を計画し、来年12月の開所を目指している。

 福島県双葉町では2022年8月30日にJR双葉駅周辺の復興拠点の避難指示が解除され、約11年5カ月ぶりに町内での居住が可能になった。現在、約60人が暮らす。双葉駅を中心とした新たなまちづくりを開始し、西側にある町営住宅「駅西住宅」の一部入居が昨年10月に始まった。隣接地には2月に町診療所が開所し、約12年ぶりに町内の医療機関が再開された。

 残る3町村の復興拠点でも解除に向けた動きが進んでいる。福島県浪江町では2023年3月31日の解除が決まった。福島県富岡町は4月初旬の解除を目指す方針を固めた。福島県飯舘村は5月の大型連休ごろの解除を目指している。

■福島県内6町村に設けられた復興拠点の状況

面積 解除時期 居住者数
富岡町 約390ヘクタール 2023年4月初旬解除を目指す
大熊町 約860ヘクタール 2022年6月30日解除 27世帯36人(2023年2月1日現在)
双葉町 約555ヘクタール 2022年8月30日解除 約60人(2023年2月末現在)
浪江町 約661ヘクタール 2023年3月31日解除
葛尾村 約95ヘクタール 2022年6月12日解除 1世帯1人(2023年3月1日現在)
飯舘村 約186ヘクタール 2023年5月の大型連休ごろ

■新たなまちづくり始動

 避難区域が設定された市町村では、施設整備などで復興の動きが顕著になっている。新たな産業創出に向けた動きもあり、地域再生の取り組みが徐々に進む。

■双葉町 双葉駅東側の商業施設 新年度から協議本格化

 双葉町の人口(住民登録者数)は2023年1月31日現在5527人。2月末現在、約60人が町内に居住している。

 町がJR双葉駅東側に設ける予定の商業施設について、新年度から協議が本格化する見通し。第3次町復興まちづくり計画案では、町体育館跡地などを建設地として検討する予定。町のにぎわい創出を図り、住民帰還につなげる。

 駅東側には2022年8月に町役場新庁舎が開庁。9月から職員が業務に当たっている。

■浪江町 浪江駅周辺再開発 隈氏が協力 新年度に建設開始

 浪江町の2023年1月末現在の人口は1万5533人。町内居住者は1964人。

 JR浪江駅周辺の再開発が本格化する。世界的建築家の隈研吾氏が協力し、新年度に建設が始まる見通し。地域のにぎわい創出や、復興のさらなる加速化が期待される。2025(令和7)年度中のグランドオープンを目指している。

 4月1日には政府が町を本拠地として福島国際研究教育機構(F-REI、エフレイ)を設立する。ふれあい福祉センターに仮事務所を置き、同じ敷地内のふれあい交流センターの一部も使用する。

■大熊町 12年ぶり古里に学校戻る 義務教育学校「ゆめの森」

 大熊町の2023年2月1日現在の人口は9981人。町内の居住人口は住民登録がない居住者を含め、推計954人が生活している。

 新年度から約12年ぶりに町内に学校が戻る。会津若松市の旧河東三小にある町の義務教育学校「学び舎(や) ゆめの森」で学ぶ子どもたちが移る。

 校舎は町内大川原地区に建設中だが、資材不足により工期がずれ込んでいる。今年夏ごろに完成する予定で、2学期から使用を開始する見通し。1学期は町役場本庁舎など大川原地区の公共施設で学習する。

大熊町大川原地区に建設が進む義務教育学校。資材不足のため建設が遅れ、2学期からの使用開始を目指している

■楢葉町 農水産物処理加工施設 今春、運用を開始

 楢葉町の人口は2023年1月末現在、6610人で、町内の居住人口は4290人となっている。

 町は6次化商品などに対応する農水産物処理加工施設を整備し、今春、運用を始める予定。営農再開の促進や農水産業全般の活性化につなげる。

 町公民館分館を改修した移住者交流拠点の整備も進む。今春にオープンする見通しで、交流人口と関係人口の増加につなげたい考えだ。

今春に楢葉町で運用開始予定の農水産物処理加工施設

■葛尾村

 葛尾村の2023年3月1日現在の人口は1304人。村内には465人が居住している。

 村は4月に「村政100年」を迎える。村が大笹地区に整備を進めている大規模酪農施設は新年度に稼働する見込み。村の基幹産業である酪農の再興を図る。

 村産業団地ではバナメイエビの陸上養殖実証実験が進む。2023年1月に初めて出荷サイズにまで成長した。2025(令和7)年春までに出荷体制を整え、販売を目指す。

■富岡町

 富岡町の人口は2023年2月1日現在、1万1705人で、町内の居住人口は2085人。

 町は新年度、LGBTQなど性的少数者のカップルの関係を公的に証明する「パートナーシップ制度」やその子どもも対象とする「ファミリーシップ制度」の導入に向けて検討に入る。

 多様な生き方を認める動きを加速させることで、交流人口と関係人口を増やし、町民の帰還や移住定住者の確保につなげる。

■広野町

 広野町の人口は2023年1月末現在、4660人で、居住人口は4209人。

 町が造成工事を進めている東町産業団地は新年度からの供用を目指している。企業誘致を進め、移住定住を促進させる。

 整備が休止している「道の駅ひろの」について、新年度中に施設の整備概要を検討する方針を立てている。

 童謡による町おこしにも力を入れており、10月5日を「広野町童謡の日」に制定する予定だ。

■川内村

 川内村の人口は2023年2月1日現在、2371人で、村内の居住人口は1971人となっている。

 国道399号の十文字工区の開通により、交通の利便性が高まった。現在は村商工会が中心となり、村といわき市を結ぶ路線バスの実現に向けて取り組んでいる。

 村役場新庁舎の整備に向けた動きも本格化している。村は検討委員会を設置し、2026(令和8)年の開設を目指して協議を進めている。

■田村市 都路町

 2023年1月31日現在の田村市民の避難状況動向調査によると、市内都路町の人口は2015人となっている。

 アウトドア施設「グリーンパーク都路」はキャンプ人気が高まり、にぎわいづくりの拠点となっている。施設内にあるクラフトビール醸造会社「ホップジャパン」も復興を後押しする産業として注目を集める。

 ライスセンターが開所するなど農業再興の取り組みも進展する。

■南相馬市 小高区

 南相馬市小高区の避難指示は2016(平成28)年7月に帰還困難区域を除いて解除された。2023年1月末現在、3820人が暮らしている。原発事故発生前の人口1万2842人の約3割にとどまっている。

 市は農業の担い手確保、移住定住などを図るため、農業研修機関開設を目指している。新年度一般会計当初予算案に開設準備事業費を盛り込み、小高区内の旧鳩原幼稚園を校舎予定地として調査などに取り組む予定だ。

■飯舘村

 飯舘村の人口は2023年2月1日現在、4802人。居住人口は1502人となっている。

 飯舘産牛の販売をはじめ、もち米「あぶくまもち」の商品が発売されるなど農畜産業の復興が加速している。村に移住した若者らが地域再生拠点として「図図倉庫(ズットソーコ)」を整備するなど、にぎわい創出を後押ししている。

■川俣町 山木屋地区

 川俣町山木屋地区の人口は2023年2月1日現在、672人で、居住人口は331人。

 「復興の花」として特産化が進んでいるアンスリウムの出荷本数は年々増加しており、全国に誇る産地に成長している。

 農業復興を後押しする穀類乾燥調製施設が完成し、本格稼働している。JAふくしま未来が運営を担い、約60ヘクタール分のコメの乾燥調製を進めている。山木屋地区を中心に、被災地で生産された穀類を受け入れている。

■復興拠点外 特定帰還居住区域を新設 政府方針 大熊、双葉で先行指定へ

 東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域のうち復興拠点から外れた地域の早期避難指示解除に向けた動きが本格化してきた。政府は帰還希望者の生活に必要な範囲を除染する「特定帰還居住区域」を新設する方針を固めている。新年度、先行的に大熊町の下野上1区、双葉町の下長塚行政区と三字行政区を指定する見通しだ。新たな区域の創設を柱とする福島復興再生特別措置法改正案を今国会に提出しており、早期成立を目指している。

 大熊町の下野上1区、双葉町の下長塚行政区と三字行政区の指定は町が国に提案した。帰還意向調査での帰還希望者の多さ、放射線量の低さなどを考慮した。新年度に国が除染を始める予定だ。

 特定帰還居住区域は復興拠点外に戻る意向を示した住民の自宅や集会所、墓地の他、復興拠点や近隣市町村などにつながる道路、営農する場合の田畑などを含む日常生活に必要な範囲となる。

 帰還困難区域のある南相馬、富岡、大熊、双葉、浪江、葛尾、飯舘の7市町村が住民の帰還意向を踏まえ、新区域の設定範囲や公共施設整備などを盛り込んだ復興再生計画を作成する。首相の認定を経て、国が国費での除染や道路などの社会基盤整備の代行を担う。

 ただ、政府は帰還の判断を保留している住民にも配慮し、新たな区域の設定後も帰還意向調査を継続する方針で、結果を踏まえた区域の見直しにも柔軟に対応する考えだ。

 復興拠点外については、政府が2020年代をかけて希望者全員の帰還を目指す方針を決めている。

東京電力福島第一原発事故による避難区域の変遷

2011年 2020年 2022年 2023年

避難生活

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故に伴う福島県内外への避難者数は2023年2月1日現在2万7399人で、昨年2月から5966人減少した。避難者数が最も多かった2012(平成24)年5月の16万4865人の約17%となり、減少傾向が続いている。
 県がまとめた2023(令和5)年2月現在の避難者の内訳は県外が2万1101人、県内が6293人、避難先不明者が5人。県外避難者は46都道府県におり、施設別でみると公営や仮設、民間賃貸などの住宅への避難者が9239人、親族や知人宅などに身を寄せている人が1万1741人、病院などは121人だった。県内の仮設住宅の入居者数は郡山市の3戸4人。
 県はアパートなどの借り上げ住宅や仮設住宅について、大熊、双葉両町からの避難者への無償提供を2024(令和6)年3月末まで延長した。

関連死、今なお増え続ける

 震災と原発事故に伴う避難の影響で体調を崩すなどして死亡し、「関連死」と認定された県内の死者は2023(令和5)年2月1日現在、2335人に上る。前年同期から4人増えており、震災と原発事故から12年となる現在も長期避難による心身の負担が被災者を苦しめている。
 県内の関連死は、県内の直接死や死亡届が出された人を含めた全死者数4166人の56%となっている。地震や津波による直接死は1605人で全体の死者数に占める割合は39%。

直接死と関連死の割合

震災関連の自殺 計119人

 厚生労働省の集計によると、震災に関連する福島県内の自殺者数は2023(令和5)年1月末時点で119人。岩手県は56人、宮城県は63人で本県が被災3県の中で最も多い。

中間貯蔵・環境再生

中間貯蔵施設への除染廃棄物輸送計画

健康 放射線管理

甲状腺検査 放射線被ばくとの関連分析

 原発事故の健康影響を調べる「県民健康調査」のうち甲状腺検査は、原発事故当時に18歳以下だった福島県内の全ての子ども約38万人を対象に、2011(平成23)年度に始まった。2014年度から2巡目、2016年度から3巡目、2018年度から4巡目、2020年度から5巡目と2年に1度の検査が行われている。25歳以上になった対象者は5年に1度の検査になる。
 県民健康調査検討委員会の下部組織に当たる甲状腺検査評価部会は2019年6月、2巡目の結果について、「現時点で甲状腺がんと放射性被ばくの関連は認められない」とする中間報告をまとめ、検討委も報告を了承した。
 評価部会は対象者の検査間隔や検査時の年齢などの要素も含めて、放射線被ばくと甲状腺がん発症の関連性について分析を進める。

 現在、甲状腺検査は5巡目が続いている。自らの意思で受検するかどうかを選ぶ「任意性」の確保と、検査の受けやすさをどう両立するかが課題となっている。
 2021年9月末現在のまとめで、1~5巡目の検査と、25歳時の節目検査を合わせると、がんの確定は226人、がんの疑いは47人となっている。5巡目の検査は新型コロナウイルス感染拡大の影響で遅れが出ている。
 甲状腺検査は学校の授業時間に行われる場合が多く、希望しない人まで受けてしまう可能性があるとの指摘がある。一方、学校が会場であることが検査の受けやすさにつながっているとの声もあり、県民健康調査検討委員会が検査の在り方を検討している。
 1巡目検査の開始から11年目を迎え、学校を卒業して親元を離れて暮らす人も増えている。こうした人が検査を受けやすい環境をどう構築するかも課題だ。
 同検討委の甲状腺検査評価部会は3巡目までの検査について、検査のがん発見率と被ばく線量の関連性を詳しく調べている。これまでは国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)が県内59市町村ごとに推定した甲状腺被ばく線量を基に評価してきたが、より精緻に評価するため、患者個人の推計被ばく線量(甲状腺等価線量)のデータを踏まえる方針だ。

県民健康調査甲状腺検査の流れ 

県民健康調査甲状腺検査の流れ (2023年6月30日現在)
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放射線の悩み減 妊産婦調査

 県民健康調査検討委員会によると、震災直後の電話相談で高い割合を占めていた「放射線の影響や心配に関する悩み」は年月が過ぎるごとに減少している。近年では「母親の心身の状態に関すること」「子育て関連のこと」の割合が上位となり、産後うつなどのメンタルヘルスに関連した悩みが増えている。
 「うつ傾向あり」とされた人の割合は、原発事故直後の2011年度の27・1%から年々減り、2018年度には18・4%に下がった。
 同委員会はうつ傾向は低下傾向にあるものの、放射線の影響に不安を持つ妊産婦がまだ一定数いることは今後も注視していく必要がある-とする報告書をまとめた。県に対しては、調査結果を踏まえた相談対応や支援を継続して行うことを提案している。

受診率は低下傾向 県民健康調査(詳細調査)の受診率の推移