データで見る 東日本大震災・東電福島第一原発事故

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有

福島の今

2022 福島の今
クリックで拡大します

福島県内推計人口

福島県における出生数と合計特殊出生率

福島県内の空間放射線量の推移

◆福島県環境放射線モニタリング・メッシュ調査結果等に基づく県全域の空間線量率マップ

世界の都市との放射線量比較

出典:環境省ホームページ ( https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h30kisoshiryo/h30kiso-02-05-07.html

避難区域

避難区域に指定された市町村、すべて居住可能に

 原発事故に伴う帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が福島県葛尾村で2022年6月12日、福島県大熊町で6月30日にそれぞれ解除された。唯一、全町避難が続いていた福島県双葉町は8月30日に解除され、避難区域が設定された全ての市町村で住民が暮らせるようになった。各自治体は住民帰還や移住定住の施策に力を入れている。

■双葉町 役場新庁舎が開庁

 双葉町の帰還困難区域のうち、復興拠点の避難指示が2022年8月30日に解除され、原発事故から11年5カ月を経て、ようやく住民が居住できるようになった。

 解除されたのは、JR双葉駅周辺など町の中心部約555ヘクタール。2020(令和2)年に先行解除された区域も合わせ、町の総面積の約15%に当たる約775ヘクタールが居住可能となった。町の人口は7月末現在、5574人。約6割に当たる3574人が住民登録している。

 今後は双葉駅を中心としたまちづくりが進む。駅東側には町役場新庁舎が開庁し、5日から業務を開始した。商業施設などにぎわい創出に向けた動きも本格化する。駅西側には災害公営住宅と再生賃貸住宅の整備が進む。

 復興拠点外には現在も2千人が住民登録している。住民からは全域除染を強く求める声が上がる。町は今後も全域除染と解除に向けた具体的な施策の明示などを国に求めていく。

双葉町内で業務を再開した町役場新庁舎で執務する職員=2022年9月5日

■浪江町

 浪江町の人口は2022年7月末現在、1万5805人。町内に居住しているのは7月末現在で1903人となっている。

 室原、末森、津島の各地区に設けられた復興拠点で9月1日に住民の準備宿泊が始まった。帰還に向けた動きが本格化する。

 町の大部分は帰還困難区域となっており、町内には立ち入り規制を示す看板も少なくない。町は来年3月の復興拠点の避難指示解除を目指している。

■大熊町 新産業創出目指す インキュベーションセンター開所

 大熊町のJR常磐線大野駅周辺を中心とした復興拠点の避難指示が2022年6月30日に解除された。

 町は住宅団地の整備など大野駅周辺の再開発を進め、新たな産業や人の流れを生み出して住民の帰還につなげる。7月には大野小校舎を再利用し、起業家らを支援する「大熊インキュベーションセンター」がオープンした。新産業創出を目指し、県内外の企業・団体が研究、開発の拠点としている。

 同駅西側には産業交流施設と商業施設を設け、2024(令和6)年12月の開所を目指している。

 町の人口は1日現在、1万51人。町内に居住しているのは1日現在で941人となっている。

2022年7月に開所した大熊インキュベーションセンター。新産業創出を目指し、県内外の企業・団体が研究、開発の拠点としている

■葛尾村 野行地区の集会所修繕 宿泊交流施設を整備

 葛尾村唯一の帰還困難区域となっている村北東部の野行地区では、2022年6月12日に復興拠点の避難指示が解除された。

 村の人口は1日現在、1314人。村内に居住しているのは1日現在で466人となっている。

 野行地区では、避難指示解除を見据え、村が復興拠点内の集会所を修繕し、宿泊交流施設を整備した。避難指示解除後に住民が集まる機会をつくり出し、住民の交流促進に力を入れる方針だ。

 地区内では農業が盛んだった。昨年、コメや野菜の試験栽培を始めた。将来の営農再開に向け、地元の生産組合や営農組合が取り組んでいる。

葛尾村の復興拠点の避難指示が解除され、開放されるゲート=2022年6月12日

■広野町

 広野町の2022年7月末現在の人口は4706人で、町内居住者は4247人。

 町は県外からの移住定住を促進するため、「広野町移住定住『共生のまちづくり』促進プラン」を策定した。震災と原発事故発生後に町を支援してきた各団体の関係者で移住定住ネットワークを構築する。人口約5千人から、2030年に6千人を目標に掲げる。

 旧広野幼稚園舎を改修した町文化交流施設「ひろの未来館」が4月に開所した。

■川内村

 川内村のワイン醸造施設「かわうちワイナリー」で醸造した初の村産ワインが2022年3月に完成した。農業振興と観光振興を目指す。

 高齢者の就業機会確保と生きがいづくりを目的に4月、「かわうちゴールド人材センター」を設立した。

 かつて村のにぎわいの中心だった「町分地区」を再生するため、景観づくり事業を進めている。

 村の人口は8月1日現在、2385人で、1973人が戻っている。

■田村市 都路町

 2022年7月31日現在の田村市民の避難状況動向調査によると、同市都路町の人口は2049人で、帰還率は92・1%となっている。

 農業再興に向けた取り組みが進展する。2021(令和3)年9月に地見城ライスセンターが完成したのに続き、今年5月には古道地区に米流通合理化施設とライスセンターができた。

 アウトドア施設「グリーンパーク都路」はキャンプの人気が高まり、にぎわいづくりの拠点となっている。

■南相馬市 小高区

 南相馬市小高区の避難指示は2016(平成28)年7月に帰還困難区域を除いて解除された。

 2022年7月末現在、3827人が暮らしている。原発事故発生前の住民基本台帳に基づく人口1万2842人の約3割となっている。

 市は営農再開と帰還促進を目指し、市小高園芸団地を建設、JAふくしま未来に運営を委託している。一部施設が完成し、4月から水稲の育苗やキュウリ栽培に活用している。

■避難区域 富岡町

 富岡町は夜の森地区を中心とした復興拠点約390ヘクタールの2023(令和5)年春の避難指示解除を目指している。立ち入り規制が今年1月に緩和され、12年ぶりに区域内の桜並木を観賞できるようになった。4月には多くの人が訪れた。

 富岡二小跡地に整備した「共生サポートセンターさくらの郷」が4月に開所し、町民の福祉・介護サービスの拠点となっている。

 8月1日現在の町の人口は1万1871人で、町内居住者は2026人。

■避難区域 楢葉町

 楢葉町に2022年6月、移住定住の相談窓口や交流ラウンジを備えた施設「CODOU(コドウ)」が開所した。JR常磐線木戸駅の西側にあったダンススクールを改修した。

 町は農業再生に向けてサツマイモの生産に力を入れている。7月、共同育苗施設が完成した。津波被害にあった岩沢海水浴場は今夏、12年ぶりに再開され、にぎわった。

 7月末現在の人口は6657人で、町内居住者は4252人。

■川俣町 山木屋地区

 川俣町山木屋地区の人口は2022年8月1日現在で680人。居住者は334人となっている。

 農業復興を後押しする穀類乾燥調製施設が完成した。JAふくしま未来が運営を担い、約60ヘクタール分のコメの乾燥調製ができる。山木屋地区を中心に、被災地で生産された穀類を受け入れる。

 「復興の花」として特産化が進んでいる熱帯アメリカ原産の「アンスリウム」の出荷本数は年々増加し、認知度が高まっている。

■飯舘村

 飯舘村の人口は2022年8月1日現在、4918人。居住人口は1503人となっている。

 帰還困難区域の長泥行政区の復興拠点は、2023(令和5)年春の避難指示解除を目指している。準備宿泊は23日に開始される。村は12日から、希望者の事前登録を受け付ける。

 「居住促進ゾーン」では短期滞在や交流を目的とした施設の建設が進んでおり、住民が帰還した際の拠点づくりが加速している。

■復興拠点外 除染範囲「見える化」へ 自民、公明両党の「加速化本部」が提言 大熊・双葉で先行

 東京電力福島第一原発事故に伴う帰還困難区域のうち復興拠点外の避難指示解除に向け、政府は2020年代に希望者全員の帰還を目指す方針を2021年8月に決定している。住民の帰還意向を個別に把握し、帰還に必要な場所を除染する考えで、現在は大熊、双葉両町で帰還意向調査を進めている。

 政府は「たとえ長い年月を要するとしても将来的に全ての避難指示を解除」する方針を打ち出している。ただ、復興拠点から外れた地域で、帰還意向のない住民の土地や家屋の取り扱い、除染の手法などは明確になっていない。

 このため、自民、公明両党の東日本大震災復興加速化本部は政府への第11次提言に、復興拠点外の避難指示解除に向けた具体策として、除染範囲と手法を地図上に整理する形で「見える化」しながら進める対応を盛り込んだ。大熊、双葉両町の一部地域では2023(令和5)年度に先行除染を開始するよう求めている。先行除染は2024年度以降に実施する除染から避難指示解除までの一連の取り組みのモデルとするため、居住地の状況などに応じた類型化も提案している。

 与党の提言が政府の復興施策の根幹を成してきた経緯があり、政府は第11次提言を受けて新たな方針を示すとみられる。

東京電力福島第一原発事故による避難区域の変遷

2011年 2020年 2023年

避難生活

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故に伴う福島県内外への避難者数は2022年2月現在、3万3365人と前年の2月から2338人減少した。最も避難者数が多かった2012(平成24)年5月の16万4865人の約20%となり、減少傾向が続いている。
 県がまとめた2022(令和4)年2月現在の避難者の内訳は、県外が2万6692人、県内が6668人、避難先不明者が5人。県外避難者は46都道府県におり、施設別で見ると2月8日現在で公営や仮設、民間賃貸などの住宅への避難者が1万2965人、親族や知人宅などに身を寄せている人が1万3570人、病院などは157人だった。県内の仮設住宅の入居者数は2月末現在、郡山市に3戸4人となった。
 住民の帰還や災害公営住宅の整備が進んだ点などから、避難者の減少につながっているとみられる。仮設住宅の撤去や自主避難者への住宅の無償提供の打ち切り、家賃補助制度の終了なども背景にある。
 県はアパートなどの借り上げ住宅や仮設住宅について、大熊、双葉両町からの避難者への無償提供を2023年3月末まで延長している。

関連死、今なお増え続ける

 震災と原発事故に伴う避難の影響で体調を崩すなどして死亡し、「関連死」と認定された福島県内の死者は2022(令和4)年3月7日時点の福島県の集計で、2331人に上る。前年同期の2320人から11人増えており、震災と原発事故から11年を迎える現在も、長期避難による心労などが被災者を苦しめている。
 県内の関連死は県の集計上、2013(平成25)年12月に地震や津波による直接死を上回った。2022年3月時点で①直接死②関連死③遺体は見つかっていないが死亡届が出された人―を合わせた全死者数4162人の56%を占める。
 地震や津波による「直接死」の死者数は1605人で、全死者数に占める割合は38・6%。

直接死と関連死の割合

震災関連の自殺 計119人

 厚生労働省の集計によると、震災に関連する福島県内の自殺者は2022(令和4)年1月末までに119人に上る。震災の被害が甚大だった岩手県の55人、宮城県の62人のほぼ2倍に当たり、被災3県でも突出している。
 震災に関連する県内の自殺者が年間で最多だったのは2013(平成25)年の23人。2020年は3人、2021年は1人で、2022年は把握されていない。

中間貯蔵・環境再生

中間貯蔵施設への除染廃棄物輸送計画

健康 放射線管理

甲状腺検査 放射線被ばくとの関連分析

 原発事故の健康影響を調べる「県民健康調査」のうち甲状腺検査は、原発事故当時に18歳以下だった福島県内の全ての子ども約38万人を対象に、2011(平成23)年度に始まった。2014年度から2巡目、2016年度から3巡目、2018年度から4巡目、2020年度から5巡目と2年に1度の検査が行われている。25歳以上になった対象者は5年に1度の検査になる。
 県民健康調査検討委員会の下部組織に当たる甲状腺検査評価部会は2019年6月、2巡目の結果について、「現時点で甲状腺がんと放射性被ばくの関連は認められない」とする中間報告をまとめ、検討委も報告を了承した。
 評価部会は対象者の検査間隔や検査時の年齢などの要素も含めて、放射線被ばくと甲状腺がん発症の関連性について分析を進める。

 現在、甲状腺検査は5巡目が続いている。自らの意思で受検するかどうかを選ぶ「任意性」の確保と、検査の受けやすさをどう両立するかが課題となっている。
 2021年9月末現在のまとめで、1~5巡目の検査と、25歳時の節目検査を合わせると、がんの確定は226人、がんの疑いは47人となっている。5巡目の検査は新型コロナウイルス感染拡大の影響で遅れが出ている。
 甲状腺検査は学校の授業時間に行われる場合が多く、希望しない人まで受けてしまう可能性があるとの指摘がある。一方、学校が会場であることが検査の受けやすさにつながっているとの声もあり、県民健康調査検討委員会が検査の在り方を検討している。
 1巡目検査の開始から11年目を迎え、学校を卒業して親元を離れて暮らす人も増えている。こうした人が検査を受けやすい環境をどう構築するかも課題だ。
 同検討委の甲状腺検査評価部会は3巡目までの検査について、検査のがん発見率と被ばく線量の関連性を詳しく調べている。これまでは国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)が県内59市町村ごとに推定した甲状腺被ばく線量を基に評価してきたが、より精緻に評価するため、患者個人の推計被ばく線量(甲状腺等価線量)のデータを踏まえる方針だ。

県民健康調査甲状腺検査の流れ 

県民健康調査甲状腺検査の流れ (2022年3月31日現在)
クリックで拡大します


放射線の悩み減 妊産婦調査

 県民健康調査検討委員会によると、震災直後の電話相談で高い割合を占めていた「放射線の影響や心配に関する悩み」は年月が過ぎるごとに減少している。近年では「母親の心身の状態に関すること」「子育て関連のこと」の割合が上位となり、産後うつなどのメンタルヘルスに関連した悩みが増えている。
 「うつ傾向あり」とされた人の割合は、原発事故直後の2011年度の27・1%から年々減り、2018年度には18・4%に下がった。
 同委員会はうつ傾向は低下傾向にあるものの、放射線の影響に不安を持つ妊産婦がまだ一定数いることは今後も注視していく必要がある-とする報告書をまとめた。県に対しては、調査結果を踏まえた相談対応や支援を継続して行うことを提案している。

受診率は低下傾向 県民健康調査(詳細調査)の受診率の推移