東日本大震災アーカイブ

避難準備区域を解除 政府と県 除染計画策定を指導

 政府は30日、東京電力福島第一原発から半径20キロ~30キロ圏内の5市町村に設定した緊急時避難準備区域を一斉に解除した。避難区域の縮小は5カ月ぶり。政府と県は3日から職員や除染の専門家を各市町村に派遣し、除染計画の策定を指導するなどして住民帰還への取り組みを後押しする。ただ、生活圏全域の除染や迅速な実施に向けた財源確保など課題は山積しており、どう対応するかが焦点になる。

 原子力安全委員会は30日、福島第一原発のプラントが安定状態にあることから広野町全域と田村、南相馬、楢葉、川内の4市町村の一部を対象とした緊急時避難準備区域の解除について「差し支えない」とする意見を政府に提出。これを受け政府は原子力災害対策本部(本部長・野田佳彦首相)を開き、解除を正式決定した。解除時刻は本部会議終了時の「9月30日午後6時11分」とした。

 政府と県が5市町村に派遣するのは職員、専門家ら数人のグループで、今月中にも除染計画を完成させ、年内にも作業に入る。並行して県は今月下旬にも道路や住宅、森林、農地など生活圏でのモデル事業に乗り出し、放射線量低減に向け有効な手法を探る。

 一方、政府は道路や上下水道などのインフラ復旧、学校や病院・診療所、福祉施設の再開に向けた教職員や医師、職員らの確保に努める。福島市で記者会見した政府の原子力災害現地対策本部住民支援班の佐藤暁班長は「原発事故以降、住民に避難を呼び掛けてきた国が今度は住民帰還を支援する立場になる。意義ある一歩だ」と述べた。

 原子力災害対策特別措置法による緊急時避難準備区域は警戒区域、計画的避難区域とともに4月22日に設定された。緊急時避難準備区域内の5市町村の対象住民は計約5万9千人で、避難者は2万8千人を上回るとみられる。

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 政府は、原子炉の冷温停止などを柱にした原発事故収束の工程表の「ステップ2」達成時に立ち入り禁止の警戒区域を見直す方針。時期は来年1月ごろの見通しで、放射線量の低い地域などについては解除するか、住民の立ち入りが可能な計画的避難区域に指定し直す案が浮上している。

 飯舘村などが対象の計画的避難区域は、政府と自治体の除染による放射線量の低減状況を見ながら判断する。ただ、区域内には警戒区域よりも線量が高い地域があり、現段階で解除の見通しは立っていない。

 伊達市や南相馬市、川内村にある特定避難勧奨地点は月1、2回程度実施する放射線量測定の結果を踏まえ見直しを検討する。

 警戒、計画的避難各区域の避難対象人口は次の通り。(平成22年の国勢調査速報に基づく県などの推計値)

 ▽警戒区域=田村市約600人、南相馬市約1万4300人、楢葉町約7700人、富岡町約1万6000人、川内村約1100人、大熊町約1万1500人、双葉町約6900人、浪江町約1万9600人、葛尾村約300人

 ▽計画的避難区域=南相馬市約10人、川俣町約1200人、浪江町約1300人、葛尾村約1300人、飯舘村約6200人

[除染は国が責任持ち対応 知事]

 緊急時避難準備区域解除について佐藤雄平知事は「解除は住民帰還の第一歩」とした上で、「除染は国が責任を持って対応するよう強く求めていく。県はインフラ復旧、教育・医療の再構築、市町村の復旧計画実現を最大限、支援する」との考えを示した。

解説 国の除染支援、急務

 「福島再生」に内閣の命運を懸ける野田佳彦首相は30日、原発事故による緊急時避難準備区域を一括解除した。しかし、2万8千人を超すとみられる避難者が自宅に戻り震災以前の生活を取り戻すには生活圏の放射線量低減が急務で、政府には財政面を含め最大限の支援が求められる。

 緊急時避難準備区域の避難者には、子育て中の若い世代を中心に放射線を懸念して転居を模索する動きがある。こうした状況も踏まえ、関係5市町村は住民帰還に向けた復旧計画に住宅や公共施設、道路、農地などの除染方針を盛り込んだ。

 しかし、市町村に技術的なアドバイスをするべき立場の国は効果的な手法を見いだせていない。警戒区域と計画的避難区域内で実施するモデル事業で有効な方法を確立したいとしており、本格実施は来年以降との見方が出ている。これでは田村市や川内村の住民帰還の時期に間に合わない可能性もある。

 一方、環境省は被ばく線量が年間5ミリシーベルト未満の地域の除染は原則、費用を補助しない方針を打ち出し、市町村から猛反発を受けた。原発事故のつけを押し付ける形で、除染をめぐる国と市町村の意識の隔たりが浮き彫りとなった。

 区域解除後、市町村への全面的な財政支援を含め本格的な除染態勢を速やかに構築しなければ「解除ありきの政治判断」とのそしりはまぬがれず、野田内閣への信頼も揺らぎかねない。(本社報道部副部長・菅野 龍太)

カテゴリー:福島第一原発事故