東日本大震災アーカイブ

【市町村の除染計画】「基準ない」国丸投げ 優先順判断に苦心

11日に発足した郡山市の原子力災害対策直轄室

 県内市町村が、生活空間の放射線量低減を目指す除染計画作りに苦心している。計画は国から除染費用の助成を受ける上での条件となり、市町村に実施場所の優先順位付けを求めている。しかし、国がガイドラインを明示せず、市町村は「順番をめぐり地域間で違いが出ると不公平感が生じる」と戸惑いを隠さない。予算の面倒は見るが基準作りは地元にお任せ-とも取れる国の丸投げの姿勢に反発がやまない。

■押し付け

 郡山市は11日、除染計画の策定などを担う原子力災害対策直轄室を設置した。しかし、配属された職員は浮かぬ顔だ。国は除染地域の優先順位付けを求めているが、人口、地域の放射線量、子どもの利用する施設数など考慮する事情が多い上、具体的な基準を示さないためだ。

 郡山市内の放射線量は毎時0・2~2・0マイクロシーベルト。最も線量の高い地域が優先順位のトップ候補だが、そうした地域の中でも放射線量に高低があり一概に「大字」「字」の単位で実施場所を決めるのは難しい。市民から除染を早急に実施するよう求める声が相次いでおり、線引きの仕方によっては反発も生まれかねない。

 直轄室職員は「道路を挟んで除染が始まるのが早い世帯と遅い世帯が出る可能性もある。国は地域の設定の仕方まで示すべきだ」と訴える。

 さらに、同じ程度の線量だった場合、どのような基準で先行地域を選ぶのかの判断も悩ましい。地域内のどの場所から作業を開始するかについても国は指針を示さない。いわき市危機管理課職員は「国が明確な基準を示さない限り、住民に除染の時期に差が出ることを明確に説明することは不可能だ」と憤る。

 これに対し、環境省福島除染推進チームは「今のところ決まった基準はない。地域の実情に応じて対応してもらう」と素っ気ない。

■3分の1

 市町村の除染計画には、放射線量低減の具体的な目標を盛り込むよう求められている。しかし、どこに基準を置けばいいのか市町村の苦悩が募る。

 村内の放射線量が毎時0・5~0・7マイクロシーベルトで推移する西郷村。除染計画には、2年間で放射線量を3分の1程度にまで低減させる方針を書き込む考えだ。事故以前の0・1マイクロシーベルト以下に押さえ込むのが理想だが、他の市町村で行われている除染作業の結果を踏まえ、実現可能と思われる範囲を選択した。村災害対策本部の担当者は「県民の健康のことを大事に考えるなら、国は早急に基準を示すべきだ」と訴えている。

 市町村から基準を示すよう求める声が出ていることについて、環境省土壌環境課は「放射線量は地域によって異なるので、市町村がそれぞれ考えてほしい」とした。

国の稚拙な対応批判 人出不足の懸念も

 市町村の策定する除染計画には、放射性物質の付着した廃棄物の仮置き場への保管・管理方法を盛り込むよう国は求めている。しかし、仮置き場の場所確保に市町村は依然、苦慮しており、「国が中間貯蔵施設と最終処分場の設置方針を示さなければ事は運ばない」との指摘もでている。

■暗雲

 大玉村は17カ所ある全ての行政区に仮置き場設置の方針を打ち出して1カ月半が過ぎた。しかし、決まったのは1つの行政区のみで、住民が5回協議しても候補地すら浮上しないケースもあるという。

 放射性物質の付着した廃棄物に対する「嫌悪感」が根強いためで、村住民生活課は「状況が打開されるためには、国が中間貯蔵施設と最終処分場の設置見通し明らかにする必要がある」との見解を示す。

 一方、林野庁は国有林内に廃棄物の仮置き場設置を認める方針を打ち出し、飯舘村と二本松、田村両市で検討が進む。しかし、本宮市は市内に国有林がない。同市は、ほぼ全域で除染を行う方針だが、市有地への仮置きに市民の理解が得られていない。このため、先行して実施する予定の通学路での作業開始にも見通しが立たない。

■体制づくり

 市町村が策定した放射性物質の除染計画を実施する段階では、住民やボランティアによる体制づくりも課題になるが人手不足の懸念も消えない。

 南相馬市は避難区域を除く市内全域の民家2万戸超を除染する方針で、側溝の清掃や庭木の剪定(せんてい)などの作業で市民の協力を得たい考え。しかし、緊急時避難準備区域が設定されていた影響もあり、市民の三割以上に当たる2万5070人が市外で避難生活を送っている。

 人手確保は難しい状況で、市長公室除染対策室の羽山時夫室長は「除染に関わる民間事業者も人材確保に苦労している。除染は市内の復旧・復興の第一歩だが、このままでは思うようにはかどらない」と肩を落とす。

■朝令暮改

 「環境省幹部の発言を環境大臣が、すぐに取り消す。朝令暮改の典型だ」。県北地方の自治体職員は、除染をめぐり国の対応にあきれる。

 環境省の南川秀樹事務次官は6月、来県した際、県内に放射性物質の付着した廃棄物の最終処分場を建設する方針を打ち出し、県が猛反発した。7月には細野豪志原発事故担当相(当時)がこの発言を「火消し」した。9月末には環境省担当職員が除染業務担当者向け説明会で、年間被ばく量5ミリシーベルト未満の地域の除染は財政支援しない考えを伝え、市町村の怒りを買った。この一件では4日後、細野氏が5ミリ未満も対象とする方針を示した。

 国の方針転換を受け、福島市は市内の約11万戸全てを除染する計画を打ち出したが、費用は少なくとも数10億円掛かるとみている。同省は県内の他、1都6県の除染も助成対象にする方針で、同省福島除染推進チームは「どれだけの規模の予算が全国で必要か現時点では分からない」と除染経費が限りなく膨らむ可能性を指摘している。

 本県向けの将来にわたる除染費用の規模や、交付時期も現段階で明示されていない。県の除染担当職員は「環境省は稚拙な対応が目に付く。こうした役所を信じ切っていいものか」と、財政支援が「空手形」になる事態を懸念する。

【背景】
 政府が8月26日、発表した「除染に関する緊急実施基本方針」には、警戒区域と計画的避難区域は国が主体となって除染を進める方針が盛り込まれた。放射線の年間被ばく積算線量が1~20ミリシーベルト未満の地域は、市町村が除染計画を策定し作業を進めるとした。除染に当たり、環境省はいったん、年間積算線量が5ミリシーベルト以上の地域での実施のみ財政支援する方針を示したが、市町村が猛反発。細野豪志環境相兼原発事故担当相が1~5ミリシーベルト未満についても補助対象にする考えを表明した。同省は今月10日、緊急方針を引き継ぐ放射性物質汚染対処特別措法(来年1月施行)の基本方針案を示した。積算線量にかかわらず国が財政支援する方針が盛り込まれている。

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