東日本大震災アーカイブ

【本県2位に転落】養殖コイ 生産激減 業者、採算取れず 天然物出荷停止 追い打ち

全国一の生産量を誇ってきたコイの養殖。風評被害などで苦境に立たされている=郡山市

 平成16年から7年連続で全国トップの生産量を誇ってきた本県の養殖コイが苦境に立たされている。東京電力福島第一原発事故の風評被害などで昨年の生産量は前年の3分の2の約700トンに減少し、2位に転落。今年4月の天然物の出荷停止に伴い、養殖業者はイメージ悪化を懸念する。一方、出荷の最盛期となる今秋、全国規模の養殖コイの品評会が郡山市で開かれることが決まり、関係者は風評被害の払拭(ふっしょく)と全国一の産地回復に期待を寄せる。

■イメージ悪化
 4月下旬、猪苗代町、北塩原村にまたがる秋元湖や阿賀川(大川ダム下流)などのコイやフナから基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性セシウムが検出され、「天然物」の出荷が停止になった。あおりを受け、郡山市の県南鯉養殖漁業協同組合は取引先に対し、説明に追われた。組合員の七海勝也さん(67)は「淡水魚のイメージがさらに悪くなった。同じコイでも安心して食べてもらえる養殖なのに...」とうつむいた。
 養殖コイは餌以外に泥などを口に含むことは少ないという。これまでの検査で基準値を上回ったことはない。組合は出荷の際、地下水のいけすに移し、泥を吐かせる作業を組合内で徹底している。

■賠償不透明
 「太ってなんぼの魚だから仕方がない」。郡山市大槻町の広瀬養鯉場の広瀬敏雄社長(64)は市内安積町の荒池で水面の餌に群がるコイを見詰める。約10メートル四方の網囲いには体長10センチほどの2年目の小コイ10万匹が泳ぐ。須賀川市と鏡石町、矢吹町を含む7カ所で養殖している。成育期の間、1日当たり計3トンの餌をまき、体を肥やす。餌代だけで年間4000万円に上る。売れ残れば、翌年の出荷に持ち越すため、より費用がかさむ。
 生産量は例年350~400トンで推移していたが、原発事故で取引先から出荷を断られるなど、売り上げが3割近く落ち込んだ。売り値も上がらず、「採算が取れない。赤字だよ」と頭を抱える。現在、加盟する組合が東電に対する損害賠償請求の手続きを進めているが、どれだけ賠償してもらえるかは不透明だ。
 先が見えないが、今年の飼育数は例年通りの23万匹とした。「祖父の代から受け継いだコイ養殖。今は我慢して復活を信じるしかない」

■出荷先にも影響
 出荷先にも風評被害の影響が及んでいる。郡山市中町の日本料理店「正月荘」のオーナー鈴木正二さん(64)は「コイ料理の売り上げが落ち込んだ」と嘆く。例年と比べ、贈答用の甘露煮などの注文が10分の1になった。25年以上にわたり、コイのかば焼きや甘酢あん掛けなど創作料理で郡山特産のグルメを提供してきた。「コイは郷土料理の目玉だけに多くの人に食べてほしい」と願う。
 市内の主婦吉田智恵子さん(60)の家庭では月に1度、食卓にコイ料理が並ぶ。「通乳が良くなるなど健康にいい食材なのでずっと食べてきた。ただ、天然物が出荷停止となったと聞いて抵抗感を持つ人もいるのでは...」と話す。

【背景】
 水産庁などによると、本県の養殖コイの生産量は平成16年から22年まで7年連続で全国一で、おおむね年間1000トン程度で推移してきた。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が起きた昨年は1位が茨城県の約1100トンで、本県は約700トンと2位だった。県南鯉養殖漁業協同組合は、県内唯一の養殖組織で、郡山、本宮の両市の8業者が加盟し、総生産量の7割以上を県外に出荷している。安積疏水ができる前まで、郡山市内に農業用のため池が多く点在した。安積疏水が完成して以降、内陸地で貴重なタンパク源を確保するため、使わなくなったため池を活用し、コイを放流したのが養殖の始まりとされる。

カテゴリー:3.11大震災・断面