東日本大震災アーカイブ

【東電賠償 建物修復費先行払い】未登記の住民、困惑 支払いの対象外 避難区域 11市町村問い合わせ続々

 東京電力の財物賠償基準に盛り込まれた建物修復費の先行払いをめぐり、不動産が未登記だったり、名義を変更していなかったりする住民の間に困惑が広がっている。東電は登記された建物の面積に応じて修復費を先払いするが、未登記や名義が違う場合は対象外としているためだ。新たに登記する場合は費用や時間がかかるなど住民の負担が増す。対象となる避難区域11市町村には問い合わせが相次いでおり、東電に対して柔軟な対応を求める声が上がる。

■反発
 「どうにも納得がいかない」。県内の仮設住宅に避難している50代の会社員男性は戸惑う。
 男性の自宅は40年ほど前に祖父が建てたが、不動産登記はしていない。東電に問い合わせたところ「登記をしてほしい」と求められたという。
 しかし、家の図面は既になく、登記するには土地家屋調査士に家の測量などを依頼しなくてはならない。名義変更もしておらず、建物を自分の所有にするには祖父の代までさかのぼって相続権利者の同意を得る必要がある。司法書士に相談したところ、10万円以上の費用がかかると言われたという。「地方では祖父の家を相続せずに使うことはよくある。被災者の負担が増すような仕組みはおかしい」と指摘する。

■相談500件超す
 市町村には問い合わせが相次いでいる。福島民報社の調べでは、浪江町の約200件を最多に田村、南相馬、川俣、楢葉、富岡、川内、大熊、双葉、葛尾、飯舘の各市町村で計500件を超える。「未登記だと支払われないのか」「祖父母の代から名義を変更していない」といった内容が多いという。

■釈明
 東電は、不動産登記を先払いの条件にした理由について「不動産登記が一般に公開されており、賠償額の算定などが迅速に行えるため」としている。
 担当者は「不動産登記を求めるのはあくまで先行払いするための対応。本賠償は固定資産税評価額などに基づき支払うことになる。1日も早く本賠償できるよう努力する」とも話す。市町村からは「納税証明での支払いにも対応してほしい」との要請も出ている。

■つかめぬ実態
 不動産登記には建物の面積や所有者などが記されている。ただ、不動産登記法では所有者が変わった場合も、名義を変更することは義務付けられていない。
 福島地方法務局によると、古い建物については登記自体がなされていないケースもある。このため、未登記だったり、名義が変更されていなかったりする建物がどの程度あるかの実態把握は不可能という。

カテゴリー:3.11大震災・断面