東日本大震災アーカイブ

【土地・家屋の財物賠償】台帳閲覧 法の壁 支払い遅れ必至

 東京電力福島第一原発事故による土地・家屋の財物賠償で、算定の基となる固定資産税台帳の取り扱いに法の壁が立ちはだかり、支払いの遅れが必至となっている。資源エネルギー庁は、市町村から東電に台帳データを提供してもらう方針だが、閲覧には所有者の同意が必要になるためだ。対象は12市町村、最大約6万4000件に上るとみられ、市町村にとって膨大な事務作業が生じる。エネ庁は市町村の負担をできるだけ少なくしたい考えだが、具体策は見えない。

 エネ庁 東電にデータ提供を 
 市町村 所有者の同意が必要 

■個人情報
 「市町村に固定資産税台帳のデータを提供してもらうことは、最も早く財物賠償を行うための方法の1つ」。資源エネルギー庁の担当者は説明する。台帳には土地、建物の地目、面積、評価額、課税標準額などが記されている。6万件以上にも及ぶデータを東電がまとめて入手できれば、賠償基準の計算式に基づきコンピューターで一気に額を算定することができる。
 だが、市町村側は慎重だ。ある町関係者は「固定資産税台帳は、いわば『個人情報の固まり』。所有者の同意が必要で、早く手続きに入りたいのはやまやまだが、そう簡単には提供できない」とする。別の町の担当者も「賠償のためとはいえ、通常なら知り得ない個人情報を民間企業に渡していいのか。大量のデータが、外部に流出する可能性もゼロではない」と頭を悩ませる。

■業務膨大
 地方税法では、不動産の所有者から委任があれば、第三者の個人や企業が固定資産税台帳を閲覧したり、証明書を入手することが可能だ。しかし、委任状の発送や受け付け、さらには証明書の発行など、一連の手続きは誰が担うのか-。
 各市町村は、東日本大震災と原発事故以降、増大した業務の処理に追われている。ある町の担当者は「被災世帯だけで約400あり、不在地主も含めれば、業務量が膨大になるのは明らか。県外自治体から職員を派遣してもらっているのに、これ以上の余裕はない」と苦渋の表情だ。エネ庁は「市町村の負担増にならない方法を考えたい」とするが、具体的な対策を見いだせないのが現状だ。

■法整備
 市町村からは、賠償を迅速に進めるため、所有者の同意がなくてもデータを提供できるようにするなどの法整備を求める声もある。
 しかし、エネ庁は、法改正などを行う場合、「法整備自体に時間がかかり、支払いが遅れる。現行制度の中で最善の方法を探りたい」との考えを示す。一方、地方税法を所管する総務省は「法改正も含め、どのような方法で賠償していくのかは、まずエネ庁が検討すること」との姿勢だ。

【背景】
 東電が発表した土地、家屋などの不動産の賠償基準では、宅地は固定資産税評価額に係数(1.43)を掛けて算出する。建物は、事故前の固定資産税評価額と築年数に応じて算定する方法の他、平均新築単価による算定方法など3つの方法から選べる。財物賠償の請求受け付けは避難区域再編が条件となっている。このため、再編が進んでいない町村では、支払い時期がさらに遅れる可能性もある。

カテゴリー:3.11大震災・断面