東日本大震災アーカイブ

除染進まず復興遅れ

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興には放射性物質を取り除く除染の推進が欠かせない。だが、仮置き場、中間貯蔵施設の整備が進んでいないことに加え、効果的な除染技術開発、森林除染の手法確立など課題は多い。多くの県民が1日も早い除染完了を待ち望む中、放射性廃棄物を川に流すなどの不適切な作業が判明し、県民の除染への信頼は揺らいでいる。

■作業員不足深刻 中間貯蔵施設 候補地選び難航
 住宅除染が進まない背景には、除染に伴う廃棄物の仮置き場の確保や中間貯蔵施整備が進まないことに加え、各市町村で除染業務を担当する職員、現場の作業員が不足していることがある。

 作業員について県内で住宅除染の完了件数が最多の福島市は大手ゼネコンだけでなく、地元業者への発注を増やしている。しかし、放射性物質への不安などから希望する人が少なく、作業員確保に苦労している。市町村の担当者は各地で除染が本格化することで、作業員の"取り合い"が起きることも懸念している。

 多くの市町村では除染業務に習熟した技術系職員の不足も課題だ。現在は他の都道府県からの職員派遣などでしのいでいるが、民間委託の現場監理業務で市民から職員の立ち会いを求められるケースも多く、各市町村は国や県に積極的な人的支援策を求めている。

 放射性廃棄物の処分の流れは【図】の通り。環境省は平成24年度内に中間貯蔵施設の建設用地を選定し、27年1月から中間貯蔵施設に除染廃棄物を運び込む工程を示している。しかし、いまだに建設候補地の現地調査にすら着手できず、用地選定時期の見通しは立っていない。

 市町村は仮置き場を確保するため、住民に協力を求めているが、住民側が「中間貯蔵施設の設置が不透明なままでは、仮置き場にいつまでも除染廃棄物が滞ってしまう」と懸念し、理解を得られないケースが多い。郡山市の担当者は「中間貯蔵施設の設置さえ決まれば、住民への仮置き場整備についての説明がつき、除染も進むのだが」と頭を悩ませる。

■積雪作業に影響 雪解け水で拡散の懸念
 除染は、積雪など気象条件に影響される。

 住宅の作業は積雪の影響を大きく受ける。庭などの表土を削り取ったり、屋根の放射性物質を除去したりすることができない。さらに、除染作業の前後には効果を確認するため放射線量を測定するが、積雪で遮蔽(しゃへい)効果が生じると正確な測定値を得ることが困難になる。

 県によると、放射性物質が付着した粘土質などが雪解け水で拡散する恐れもあるという。県除染対策課は「今冬は降り積もった雪が解けない期間が長く、作業に影響が出ている」としている。

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 環境省の除染ガイドラインは森林の除染について、住宅地の近隣20メートルの範囲で落ち葉を除去するなどの方法を示している。しかし、放射性物質は雨や風で移動する。このため、近くに森林がある住宅は、除染で空間線量が低減したとしても、森林から放射性物質が再び流入し、線量が上昇する可能性が否定できない。「除染に力を入れても、"いたちごっこ"になるのでは」と不安の声も上がる。

 県の面積の7割を占める森林の除染は、本県の環境回復に極めて重要だ。だが、環境省は昨年の検討会で、森林からの放射性物質が拡散する割合は小さいなどとして「森林全体を除染する必要はない」との判断を示した。県が猛反発し判断は見送られたが、国の方針は今も示されないままだ。

■技術開発が不可欠
 効果的な除染を行うためには、新たな技術開発が求められている。国は民間からの公募による除染技術の実証試験事業を行っている。

 内閣府の平成23年度の実証試験事業では、超高圧水表面処理工法を用いた高圧洗浄が特に大きな効果を確認できた。

 汚染された舗装面などに吹き付ける水の圧力は、最大280メガパスカル。一般に市販されている家庭用の高圧洗浄機は7〜10メガパスカル程度が平均で、その20倍強の圧力で水を吹き付ける。幾何学形のブロックを組み合わせた「インターロッキング」舗装の除染では、除染前の線量が毎分1777カウントだったのに対し、処理後は101カウントと94%低減できたという。

 また、アスファルトでも、毎分1710〜5万3448カウントと線量の低・中・高部分でそれぞれ除染。その結果、表面汚染は41〜513カウントと、いずれも94%以上の低減率を達成した。

 また、県林業研究センターも、森林の放射線量低減技術の開発に向けた実証試験を行った。60メートル四方程度の森林内の落ち葉層を取り除いたり、間伐したりすることでどのように線量が変化するかなどを確認した。その結果、落ち葉除去と間伐を組み合わせれば、針葉樹林で約30%、広葉樹林で約40%の低減化が図られる結果になった。ただ、センターは報告で「伐採による除去物の量は膨大となるため、軽減化の手段を見いだす必要がある」との課題を挙げている。

カテゴリー:震災から1年11カ月

なかなか進まない県内の住宅除染。作業員の確保などが課題になっている=福島市、2日