東日本大震災アーカイブ

(43)命の重さ 慰謝料 迫る時効 新法の成否 救済の鍵 問われる国会の「本気度」

国会では消滅時効に関する議員立法を目指す動きがある。与野党の議論の行方に注目が集まる

 死亡慰謝料など損害賠償請求権の民法上の消滅時効は3年だ。福島第一原発事故を起こした東京電力は時効を理由に請求を妨げないとしているが、法的裏付けはない。今後も増えるとみられる関連死を救済できるのか。
 「東電に時効への対応を委ねるのは危うい」。福島市松木町に事務所がある弁護士の新開文雄さん(61)は、政府の「東電任せ」の姿勢に憤る。
 衆参両院が今年5月、全会一致で成立させた「特例法」は、時効までに裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てた人に限り、手続きの打ち切り後1カ月間は民事訴訟を起こせるとした。国会で、衆院は付帯決議で「全ての被害者が十分な期間にわたり、賠償請求権の行使が可能となるよう、時効などに関して検討を加え、必要な措置を講じること」とした。参院は同様の付帯決議で「平成25年度中」と措置を講じる期限にまで踏み込んだ。衆参両院が消滅時効に関する新たな措置の必要性を認めた形だ。
 法をつくる立場にある本県関係の国会議員は与野党問わず、議員立法の必要性を認識する。ただ、被災者の確実な救済につながる制度づくりは進んでいない。
 政権与党の自民党は党東日本大震災復興加速化本部内の「原発事故被害者の生活支援及び産業再生に関する委員会」で新たな議員立法について検討する見通しだ。時効問題をどう規定するかは現時点で明確にされていない。
 本県関係の自民党議員は「全ての被災者が確実に救済される道筋をつけることが重要だ。時効撤廃のみにこだわらず、議論の中でどんな対応が可能なのか知恵を出し合いたい」と慎重に言葉を選ぶ。
 新たな法整備の妥当性を認める本県関係の民主党議員も「立法化の検討とともに、未請求者への対応も重要となる」との見方を示す。さまざまな事情で請求に踏み切れない被災者の実態把握についても東電任せにせず、国や自治体が積極的に関わる仕組みづくりが必要だ-と説く。
 新たな法に何を規定するのか。日本弁護士連合会(日弁連)が7月に首相や文科相に提出した意見書に、被災者の救済に必要な措置のヒントが見える。
 意見書は、消滅時効に柔軟に対応するという東電の見解について「加害者である東電の判断で、被害者の請求権の消滅の有無が決まることを意味する」とする。立法措置により消滅時効の問題を解決すべきだ-と主張している。
 新開さんは原発事故関連死で家族を亡くした遺族の救済に、地元選出の国会議員が「命懸け」で取り組むことが不可欠だと指摘する。「形ばかりの付帯決議で終わらせてはならない。残された時間は少ないが、法整備はまだ、間に合う」
 原発事故の損害賠償の課題は、算定方法、時効、未請求者への対応など日に日に増えている。原発事故被災者の賠償請求権は守られるのか。10月中旬開会が予定される臨時国会での議論で国会議員の「本気度」が問われる。
 =「命の重さ 慰謝料」は終わります=

カテゴリー:原発事故関連死