東日本大震災アーカイブ

富岡、コメ出荷再開に光 震災後初めて 15日田植え

震災後初のコメ出荷へ向けて行われている代かき作業

■ふるさと生産組合

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故後、初めてのコメの出荷に向けた実証栽培が富岡町で始まった。地元の農家でつくる「ふるさと生産組合」は9日、代かき作業を行った。15日に田植えをする。昨年の試験栽培では、収穫したコメは全て廃棄処分に。組合長の渡辺康男さん(63)は「無念と悔しさばかりが残った。今年は喜びと希望の田植えになる」と額の汗を拭った。
 実証栽培が始まったのは、避難指示解除準備区域に設定されている町南部の下郡山地区にある組合員所有の120アールの水田。昨年、30アールで行われた試験栽培の4倍の面積となる。
 代かき作業は組合員4人が担当し、10日も続ける。15日の田植えでは、「コシヒカリ」と「天のつぶ」、「こがねもち」を植える。「昨年が一歩前進なら、今年は二歩も三歩も前に進む」。組合長の渡辺さんは水田の水量を調節しながら笑顔を見せた。
 組合は震災前の平成21年に農家有志で発足した。現在、14人の組合員は郡山市やいわき市に避難している。渡辺さんは西郷村の借り上げアパートから通い、田植えの後は、交代で水田の様子を見る。
 昨年の試験栽培では、「ひとめぼれ」など1・8トンを収穫した。「廃棄を前提としたコメ作りはつらかったよ」。渡辺さんは振り返る。放射性物質検査の結果は1キロ当たり17~18ベクレルで、食品衛生法の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超えるコメはなかった。
 今年は約6トンの収穫を見込んでいる。全袋検査で安全を確認した上で、組合で一部を保有するほかは、JAふたばと契約して出荷する。品種別の食味調査も行い、「安全・安心」に加え、「富岡のおいしいコメ」を発信したい考えだ。
 町内では、震災と原発事故前の平成22年は545ヘクタールでコメを作付けしていた。町の営農再開への挑戦は、まだ始まったばかりだ。「実証栽培を軌道に乗せることで、作付面積がさらに広がってくれれば」。渡辺さんは来年以降を見据えた。

【作付面積177ヘクタール増見通し 26年産米出荷予定避難区域7市町村】
 原発事故で避難区域が設定された12市町村のうち、26年産米の作付けと出荷を予定しているのは富岡町のほか、田村、南相馬、川俣、広野、楢葉、川内の6市町村。前年と作付け農家はほぼ同規模だが、作付面積が177ヘクタール増える見通しだ。福島民報社が4月末に市町村やJAに聞き取り調査した。
 7市町村の作付け農家は5493戸で、原発事故前の22年と比較すると、4197戸減の56・7%。作付面積は2222ヘクタールで、事故前に比べ6382ヘクタール減の25・9%にとどまる。
 富岡、楢葉、浪江、飯舘は全量全袋検査を経て出荷が可能な実証栽培を行う。このうち、富岡と楢葉が原発事故後初の出荷を予定している。大熊町と葛尾村は出荷はしない試験栽培に取り組む。双葉町での作付けの見通しは立っていない。

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