東日本大震災アーカイブ

福島をつくる(61) 第5部 酒づくり 喜多の華酒造場(喜多方) 夫婦で蔵元を再建

蔵で作業する慎也(右)と里英

 秋晴れとなった10月中旬。昔ながらの酒づくりの道具が所狭しと並ぶ蔵の中に、一仕事を終えた若夫婦の姿があった。「あれも、これも最初は何も分からなかったよ」。喜多方市の喜多の華酒造場専務の星慎也(35)は、酒造業界で「ため」と呼ばれる容器を手に取り、照れ笑いした。寄り添う妻の里英(31)が「そうそう」とうなずいた。
 今年で3年目の酒づくりとなる。新酒の仕込み作業が本格化し、2人は決意を新たにする。「誰もがうまいと思う、いい酒をつくる」

 喜多の華酒造場は大正8(1919)年に創業した市内で一番新しい蔵元だ。里英は杜氏(とうじ)の代表社員・敬志(65)の長女。慎也は婿入りし、酒づくりの世界に飛び込んだ。里英は三姉妹で、蔵は跡継ぎ問題を抱えていた。
 慎也は東京都出身で元印刷会社の営業マン。酒づくりの経験は一切なかった。里英は同じ都内の会社で働く後輩社員だった。
 「喜多方に帰って酒づくりをする」。一つの決断をした里英は酒づくりの基礎を学ぶため、平成22年に会社を辞めて都内の東京農大短期大学部醸造学科に進学した。
 「俺もついていく」。当時、交際していた慎也も里英の挑戦を後押ししようと退職した。25年10月に籍を入れ、同11月に喜多方に移り住んだ。
 慎也は清酒アカデミー(県清酒アカデミー職業能力開発校)に今年4月に入校し、24期生に当たる。1年早く入校した里英は23期生。夫婦そろってアカデミー生だ。
 「酒づくりの基礎はもちろんだが、酒蔵同士の『横のつながり』ができたことが何より大きい」。慎也はアカデミーに通う意義を強調する。相談できる先輩に、酒づくりについて熱く語れる同期生...。切磋琢磨(せっさたくま)する仲間が常に身近にいることが何より大きいという。「蔵元の垣根を越えた交流が、技能向上につながっている」と実感している。

 喜多の華酒造場は平成17年度の全国新酒鑑評会で「きたのはな」を出品し、金賞を獲得した。以来、全国の舞台で金賞から遠ざかっている。
 蔵を閉めることを検討していたここ数年は県新酒鑑評会にすら出品していなかったが、来春、9年ぶりに挑戦する。もちろん金賞が目標だ。
 「今や福島の金賞は全国の金賞に値する。喜多の華の名前を再び全国にとどろかせたい」。ハードルは高いが、2人の夢はぶれない。
 金賞を取るにはどうすればいいのか-。会津若松市の県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターはその答えを見つけようとしている。(文中敬称略)

カテゴリー:福島をつくる-未来への挑戦