東日本大震災アーカイブ

【震災から5年】「住民避難・原発事故関連死」 住まい再建 目立つ遅れ

町営の災害公営住宅の整備が進む桑折町の仮設住宅跡地(写真右)。左は現存の仮設住宅。写真右奥には27年6月に入居が始まった災害公営住宅がある=2月8日

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故による避難者数(自主避難者を含む)は2月1日現在、9万9750人で、県の1月の集計で初めて10万人を下回った。しかし、災害公営住宅の建設が進む一方で、今なお約1万8千人が仮設住宅での暮らしを余儀なくされている。発生から5年で仮設住宅が姿を消した阪神大震災と比べると、住まいの再建は大幅に遅れている。災害公営住宅への転居に伴い、近隣同士のつながりの希薄化が懸念され、孤立しがちな高齢者らをどう支援するかが新たな課題となっている。
 
 ■原発事故避難者向け災害公営住宅整備20.6%
 
 東京電力福島第一原発事故に伴う災害公営住宅で、県と市町村は平成29年度末までに15市町村で4890戸を整備する。八市町村に1005戸(1月28日現在)が完成し、821世帯(平成27年12月28日現在)が入居している。
 市町村別の整備状況は【図】の通り。全体の完成戸数の進捗(しんちょく)率は20・6%となっている。郡山市で最も多い400戸が完成した。いわき市の289戸、福島市の129戸と続く。
 県は早期整備のため、民間業者が建設した住宅を買い取る手法などを採用している。県の担当者は「できる限り計画を前倒しで整備を進めたい」としている。
 
 ■津波被災者ら向け整備進捗率は7割
 
 市町村がつくる地震と津波被災者向けの災害公営住宅は11市町で建設している。全体計画2811戸のうち、2198戸(平成27年12月28日現在)が完成した。進捗率は68・3%。1942世帯が入居している。
 
 ■富岡町民向け大玉の横堀平団地 白土俊一郎さん 災害公営住宅で新たな生活 高齢者の交流減 懸念
 
 1月に完成した大玉村の富岡町民向け災害公営住宅「大玉村営横堀平団地」。約1・4ヘクタールの斜面に造成された敷地に、真新しい木造平屋と二階建て計59戸が並んでいる。
 団地に隣接する安達太良仮設住宅で避難生活を送っていた小学校教諭白土俊一郎さん(59)は、母親の美津子さん(84)と昨年10月、いち早く完成した木造平屋の住宅に入居した。
 震災後、川内村や飯舘村、福島市などを転々とし、大玉村の仮設住宅に入ったのは平成24年4月。4年近くを過ごした。周囲には高齢の入居者が多く、住民の集まる行事や雪かきなど何かと頼られる機会が増えた。「自然と距離が縮まり、住民同士の絆が強まっていった」と振り返る。
 災害公営住宅に移って約4カ月。3LDKの部屋は広く、荷物の置き場所にも困らなくなった。生活が便利になった半面、人と人とのつながりが急に希薄になったと感じている。住民が集まる機会が減り、会話も減った。「窓を開ければ隣人の顔が見えるような生活で生まれた高齢者の見守りや助け合いができなくなった」と話す。
 一人暮らしの高齢者も大勢入居している。姿を見掛けなくなり、安否が気に掛かる。「体の自由が利かなくなり、自立が難しい高齢の避難者の生活をどう支えるのか。国には支援の強化を求めたい」と強く訴える。
 
 ■仮設暮らし1万8000人余 空き増え、孤立者支援や集約課題
 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故による県内の仮設住宅数は1月29日現在、1万6347戸で、1万8602人が生活している。災害公営住宅の整備の遅れなどから、全ての避難者が仮設住宅を出るには数年かかる見通しだ。
 一方で、住民帰還や恒久住宅への住み替えなどが進み、全体の約40%の6600戸(同)が入居者がいない空き部屋となっている。空き部屋が増えれば、近隣同士のつながりが薄まるため、孤立しがちな高齢者らの支援が求められている。
 県は対策として、仮設住宅の集約も選択肢と一つとしているが、これまでに撤去されたのは桑折町の300戸など計453戸で、全体の約3%。集約が進まない理由について、県は「災害公営住宅の完成や古里への帰還を待つ住民が多く、転居による負担をかけられない」としている。
 
 ■福島大行政政策学類教授 鈴木典夫氏に聞く 人付き合いの場提供を
 
 避難者の生活再建が進む一方、高齢化や就業意欲の低下など問題は多様化している。地域福祉学が専門で、学生ボランティアとともに避難者支援活動を続けている鈴木典夫福島大行政政策学類教授(54)に今後の支援の在り方や課題を聞いた。
 
 -住民避難の現状は。
 
 「県の統計によると震災、原発事故による避難者が10万人を下回った。仮設住宅から災害公営住宅への住み替えが進みつつあり、避難先で住宅新築する人も増えた。若い世代が生活の自立再建を果たす一方で、仮設住宅には経済力や生活力の弱い災害弱者と呼ばれる高齢者の姿が目立つ。避難解消とみなされる災害公営住宅の住民も60歳以上の割合が半数以上を占め、一人暮らしのお年寄りも多い。一般の住宅を借り上げる見なし仮設住宅はプライバシーが保たれる半面、周囲との関係が希薄になりがちで支援の目が行き届かないのが現状だ」
 
 -支援の課題は。
 
 「数字上は避難者数は少なくなったが、住み慣れた故郷を離れて暮らす人の数はさほど変わっていない。これまでと変わらない支援が必要だが、震災と原発事故から時間がたつにつれ、ボランティアの総数は確実に減ってきている。災害公営住宅に移った避難者と地域住民のつなぎ役となるコミュニティー交流員も足りていない」
 
 -今後どのような支援が必要になるか。
 
 「災害公営住宅に移った避難者らからは仮設住宅にいたときよりも人と接する機会が減り、寂しくなったとの意見をよく聞く。空き部屋が目立つようになった仮設住宅の住民からも同様の声が上がっている。人付き合いの場を提供することが必要になってくる。バーベキューをしたり、みんなで体操したり、内容は何でもいい。『予定』があるだけで生活の張り合いが変わってくる」
 
 -避難住民の人付き合いを創出するために必要なことは。
 
 「避難先が変わり、人間関係が振り出しに戻ってしまった避難者にとっては新しいコミュニティーになじむのに時間がかかる。新たな人間関係を築くには第三者の潤滑油的な役割が不可欠となる。支援する側も世代間のギャップを埋め、コミュニティーが活性化するように心掛けなければならない」

 すずき・のりお 福島市出身。同志社大大学院文学研究科社会福祉学専攻修士課程修了。京都市社会福祉協議会地域福祉活動専門員、高野山大講師を経て平成11年、福島大行政社会学部(現行政政策学類)助教授に就いた。23年から同大行政政策学類教授。専門は地域福祉、コミュニティーワーク。54歳。


カテゴリー:震災から5年