東日本大震災アーカイブ

【震災から5年】「社会基盤」道路、鉄道 復旧進む

JR新地駅周辺で進む常磐線の電気工事。奥は建設中の駅乗り換えこ線橋


 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故により、県内の道路、鉄道、港湾など社会基盤は大きな被害を受けた。災禍から丸5年を迎えようとする中、常磐自動車道は全線が開通し、復興を支える東北中央自動車道なども着々と建設工事が進む。JR常磐線は南相馬市の原ノ町―小高駅間が今春、運転を再開する予定だ。いわき市の小名浜港は国際物流拠点を目指し整備が始まった。
 
 ◆東北中央自動車道 沿岸部復興後押し
 
 相馬市と秋田県横手市を結ぶ自動車専用道路で、県内では相馬―福島間と福島―米沢間で整備が進んでいる。
 相馬―福島間は常磐自動車道と東北自動車道を結ぶ全長約45キロ。115号国道バイパス「相馬福島道路」として、国が復興支援道路に位置付けている。震災の津波で被災した浜通りと中通りを結び、沿岸部の早期復興を後押しすると期待される。
 相馬福島道路は5区間に分けて工事が行われている。阿武隈東道路の阿武隈東(仮称)―相馬西インターチェンジ(IC)(仮称)間(10・7キロ)は平成28年度、阿武隈(仮称)―阿武隈東IC間(5キロ)と霊山道路の霊山(仮称)―阿武隈IC間(12キロ)は29年度、相馬西―相馬IC間(6キロ)は30年度にそれぞれ開通する見通し。全線開通時期は未定。
 福島―米沢間は延長28キロで、福島ジャンクション(JCT)―大笹生IC(仮称)間が28年度、米沢(仮称)―大笹生IC間が29年度の供用開始を目指している。
 
 ◆常磐自動車道 2町にIC新設へ
 
 常磐富岡―浪江インターチェンジ(IC)間(14・3キロ)は平成27年3月1日に開通し、埼玉県と宮城県を結ぶ総延長300・4キロの全線がつながった。
 国土交通省は大熊、双葉両町内にそれぞれ通常型ICを設ける方針。開設時期は大熊ICが30年度、双葉ICが31年度を見込んでいる。同省はいわき中央IC―仙台東部道路岩沼IC(宮城県岩沼市)の約127キロにわたる暫定二車線区間について、4車線化に向けた取り組みを進める方針を明らかにしている。
 
 ◆会津縦貫北道路 昨年9月全線開通
 
 喜多方市と会津若松市を結ぶ地域高規格道路。平成27年9月に湯川南―会津若松北インターチェンジ(IC)間の工事が終了し、13・1キロの全線が開通した。交通や観光、産業、医療への波及効果に期待が高まっている。
 今後、湯川南ICと会津若松北ICの間から現在整備中の若松西バイパスまでの約3・2キロ区間をつなぐ。28年度に事業着手する方針で、35年度の開通を目指す。会津若松市と南会津町を結ぶ会津縦貫南道路(約50キロ)は、湯野上バイパスが国直轄権限代行で事業が進んでいる。下郷田島バイパスは27年度に新規事業化された。
 
 ◆ふくしま復興再生道路 30年代前半完成へ
 
 県は中通りと浜通りを結ぶ主要な国道と県道の8路線を復興のための重要路線「ふくしま復興再生道路」と位置付け、平成30年代前半の完成を目指している。
 県によると、8路線は避難区域やその周辺の広域的な物流、地域医療、産業再生を支える基幹道路。県が戦略的に整備している。
 1月末現在、8路線の全29工区のうち7工区で工事が完了した。19工区が事業中、3工区が事業未着手となっている。
 
 ■各路線の整備状況
 
 ・114号国道(福島市~浪江町間8工区)...完了3工区、事業中3工区、事業未着手2工区
 ・288号国道(郡山市~双葉町間5工区)...完了2工区、事業中3工区
 ・349号国道(小野町~川俣町間3工区)...全工区事業中
 ・399号国道(いわき市~浪江町津島間2工区)...両工区事業中
 ・県道原町川俣線(南相馬市原町区~川俣町間3工区)...完了1工区、事業中2工区
 ・県道小野富岡線(いわき市川前町~富岡町間6工区)...完了1工区、事業中4工区、事業未着手1工区
 ・県道吉間田滝根線(いわき市川前町~小野町間1工区)...事業中
 ・小名浜道路(いわき市泉町~いわき市山田町間1工区)...事業中
 
 ◆常磐線一部区間除き再開通にめど
 
 震災による津波と原発事故で大きな被害を受けたJR常磐線は浪江―富岡駅間を除き再開通の見通しが立った。
 現在、不通となっている原ノ町(南相馬市)―竜田駅(楢葉町)間のうち原ノ町―小高駅(南相馬市)間は、今年春の再開を目指し工事が進む。小高―浪江駅間は平成29年春、富岡―竜田駅間は30年春までにそれぞれ再開する予定。原発事故の帰還困難区域が含まれる浪江―富岡駅間の再開時期は未定だが、政府内に32年に再開させる案が浮上している。
 津波被害が甚大で線路や駅舎が流された相馬―浜吉田駅(宮城県亘理町)間は線路の一部を内陸に移設し、今年末までには運行を再開する見込み。当初は29年春を目標としていたが、用地買収が順調に進んだため、JR東日本は再開時期を前倒しした。
 
 ◆常磐線復旧ルポ 早期開通へ急ピッチ 相馬-浜吉田駅間(宮城)
 
 震災の津波で被災したJR常磐線相馬―浜吉田駅間(約22・6キロ)は今年末までの運転再開に向け、急ピッチで復旧工事が進んでいる。
 津波で駅舎が流失した新地町の新地駅周辺では、駅舎建設や電気設備などの工事が行われている。新たな駅は震災前の位置から約300メートル南西の内陸側に移された。基礎部分に当たる「躯体(くたい)」が完成し、ホームが姿を現している。乗り換えこ線橋も整備されている。平屋の駅舎の骨組み工事も始まった。架線や信号機などに電気を送る電源ケーブルの敷設工事も進行中だ。
 JR東日本は同区間内の駒ケ嶺(新地町)―浜吉田駅間のうち14・6キロを内陸に移す。移設に伴う工事で、ピーク時は1日約千人が作業に当たった。
 相馬地方と仙台圏を結ぶ鉄道が再開すれば、通学・通勤が便利になり、沿岸被災地の復興が加速すると期待される。
 移設工事を主管するJR東日本東北工事事務所常磐復興工事区の宮島和彦副区長(45)は「気を引き締めて一つ一つの工事に当たり、1日も早い開通につなげたい」と話している。(相馬支局長・須釜 豊和)
 
 ■JR東日本福島支店長 伏見欣人氏に聞く 常磐線復旧進む年に
 
 震災と原発事故で被災した浜通りの地域再生に向け、地元からJR常磐線の早期全線復旧を求める声が上がる。伏見欣人(よしひと)JR東日本福島支店長(59)に見通しなどを尋ねた。
 
 ―JR常磐線の復旧工事の進捗(しんちょく)状況は。
 
 「小高―原ノ町駅間の再開時期は、南相馬市小高区の避難指示区域解除に合わせることになる。今年12月末までに再開予定の相馬―浜吉田駅(宮城県亘理町)間のうち、駒ケ嶺―浜吉田駅間は今月から通電試験に入る。平成29年春までに再開を目指している浪江―小高駅間は1月から復旧工事が始まり、請戸川に架かる室原川橋(浪江町)の橋工事に着手した」
 
 ―竜田と富岡駅間、富岡と浪江駅間はどうか。
 
 「津波で被災した富岡駅を移設する計画で、竜田―富岡駅間は30年春までの再開を目指している。富岡町では28年秋以降に複合商業施設が整備されることが決まっており、住民帰還に向けた準備が着々と進んでいる。富岡駅を町復興のシンボルとして再建し、古里に戻る人たちの交通の利便性向上を図りたい。再開時期が未定の富岡―浪江駅間は試験除染の結果を精査し、本除染の方法や復旧作業の在り方を検討する」
 
 ―再開に対する住民の期待は大きい。
 
 「原発事故による避難区域の区間は再開時期が住民帰還の判断材料にもなる。相馬―浜吉田駅間の沿線住民は仙台圏に通勤、通学、通院している人が多く、再開すれば利便性が向上する。仙台圏への人口流出に歯止めをかけることにもつながる」
 
 ―常磐線全線復旧への決意を聞かせてほしい。
 
 「単に駅舎や線路を新しくするだけでなく、鉄道の復旧を通じて新たなまちづくりに貢献し、浜通りの復興を支えたい。鉄道の復旧は住民の安全・安心確保にもつながる。今年は県民の目に見える形で常磐線の復旧が進む年になる」
 
 ふしみ・よしひと 南相馬市生まれ、原町高卒。昭和52年に旧国鉄に入社。仙台駅助役、仙台支社総務部宮城サポートセンター所長などを歴任し、平成25年10月から福島支店長。59歳。

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