東日本大震災アーカイブ

【震災から5年】「中間貯蔵施設」 用地交渉見通せず

■公有地売却町、慎重に対応
 環境省は中間貯蔵施設の整備を加速化させるため、建設候補地を抱える大熊、双葉両町に公有地の売却を打診した。しかし、両町とも、住民感情を考慮し慎重に対応する方針だ。
 これまでに契約した個人所有の土地は建設予定地内に点在しているため施設整備は難しい。一方、町などが所有する公有地は予定地約16平方キロの約5分の1を占めている。運動公園などのまとまった用地を確保できれば、速やかに工事に着手できる。
 ただ、両町の関係者は「町が交渉を始めれば、契約に慎重な地権者をあおっていると受け止められる」との懸念も抱く。大熊町の渡辺利綱町長は「建設を受け入れた以上、協力を拒むわけではないが、地権者交渉がある程度まで進まないと対応は難しい」との考えを示している。
 県は平成28年度、中間貯蔵施設の用地交渉を加速させるため環境省に職員を派遣する。
 人数は十数人となる見通し。中間貯蔵施設等対策室は「地権者交渉が進まない現状などを精査し、広域自治体として交渉に関与していく」としている。県幹部は「これまで施設建設は国の責任と訴えてきた。その姿勢に何ら変更はない」とくぎを刺している。


■減容化施設8カ所で稼働
 除染廃棄物などを処理するため、県内では国直轄事業か代行事業で整備された減容化施設が【図】の通り8カ所で稼働している。
 南相馬、富岡、川内、浪江、葛尾、飯舘の6市町村では国直轄事業として、広野町では代行事業として整備された。
 このうち、飯舘村には蕨平、小宮両地区に1カ所ずつ施設がある。蕨平地区は放射性物質を含んだ廃棄物を広域的に集約して処理する初めての施設。村内から出た除染廃棄物や家屋の廃材、福島、南相馬、伊達、国見、川俣5市町の稲わら、福島、南相馬、国見3市町の下水汚泥を焼却する。1日120トンの処理能力を持つ焼却炉を2つ備え、一方は1月に本格稼働した。もう一方でも近く処理が始まる見通しだ。
 この他、南相馬市の原町、鹿島両区のごみを代行処理する国の焼却施設(処理能力・1日当たり200トン)が小高区で今春以降、稼働する予定だ。楢葉町でも今秋の運用開始を目指し、国直轄で焼却施設(同)の建設が進められている。


■福島環境再生事務所長兼中間貯蔵施設等整備事務所長 土居健太郎氏に聞く 全体像早く示したい

 県内の環境再生を図るため、除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設の整備は避けて通れない課題だ。環境省福島環境再生事務所長兼中間貯蔵施設等整備事務所長の土居健太郎氏(50)に、建設に向けた見通しなどを聞いた。

 -用地交渉で契約に至ったのは44人にとどまる。
 「契約を結ぶには建物や土地、財産について現地調査し、地権者に提示する補償額を算定する必要があるが、この作業に時間がかかっている。専門のコンサルタント会社が限られているためだ。全国の約70社から協力を得ているが、算定の担当者は現地調査にも立ち会うため、遠隔地からの移動などで時間を要してしまっているのが現状だ」

 -丸川珠代環境相は昨秋、作業効率化に向け、算定業務のマニュアル化など改善策を示した。
 「震災、原発事故の影響で失った財産の価値に対する評価は、ダムの用地買収など他の補償とは異なる。各社の担当者も悩む場面があり、マニュアルを作ったことで一部は効率化した。ただ、補償額を算定し地権者に提示するまでに一般的な分譲住宅でも3カ月程度かかっている。浜通りに多い3世帯住宅のような大きな家や工場になると半年程度の時間を要する」

 -用地交渉を担当する環境省の職員の数は間に合っているか。
 「現在は80人ほどだが、今春には100人規模に態勢を拡充する。公募に当たり、国土交通省や都道府県、政令指定都市などを回って用地交渉の経験がある職員OBに応募してもらうようお願いした」

 -環境省は除染廃棄物の試験輸送を昨年3月13日に開始し、おおむね1年で完了するとしていた。見通しはどうか。
 「大雪などで運行が大幅に遅れるといったケースはなく5日現在、43市町村のうち31市町村で完了した。今春には作業を終える見通しだ。ただ、交通安全の面で課題も見えた。運転手の資質向上、運行管理などを徹底したい」

 -市町村から施設整備や本格搬入の工程表を早く示してほしいとする声が高まっている。
 「見通しを示すことは必要で、我々もそうした声を重く受け止めている。住民の帰還意識にも影響すると認識している。用地取得の問題があるが、なるべく早く全体像を示したい」
 どい・けんたろう 札幌市出身。北海道大大学院衛生工学修士課程修了。平成2年に厚生省(現厚生労働省)入省。環境省低炭素社会推進室長、同省地球温暖化対策課長などを歴任し、27年10月から同省福島環境再生事務所長兼中間貯蔵施設等整備事務所長。50歳。

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