東日本大震災アーカイブ

【震災から5年】「県民健康調査」 東大大学院理学系研究科教授 早野龍五氏に聞く 「結果認識に差異」「ケア大切 」

 原発事故を受け、県内では県民健康調査や子どもの甲状腺検査が行われている。放射線の健康影響を調べている東大大学院理学系研究科の早野龍五教授(64)に聞いた。
 
 -外部被ばく線量を推計する県民健康調査の問題点は。
 
 「回答率が低いことが課題になっているが、原発事故から5年近くが経過し、今の段階では当時どのように行動をしたかを答えることは難しいと思う。携帯電話の衛星利用測位システム(GPS)のデータが活用できれば個人の行動を追い掛けるには有効だ」
 
 -甲状腺検査の結果についてどう考えるか。
 
 「検査はまだ二巡目の本格検査の途中であり、結果について放射性物質の影響だと確定的に言う段階ではない。もし、原発事故との因果関係を問うなら、甲状腺がんと疑われる人が受けた線量を把握することが大切になる。検査を始めた以上は甲状腺がんと診断された子どものケアは重要だ。家族に丁寧に説明し、経済的に不利にならないようにする必要がある」
 
 -県内各地で内部被ばく検査などを行ってきた。
 
 「平田村のひらた中央病院など県内3病院で内部被ばく検査を受けた乳幼児ら全員から放射性セシウムは検出されていない。県内では、計測して放射性物質が検出されないことと、人々が結果に納得するということのギャップをどのように埋めるかが大きな課題になっている。私は科学者の活動としてデータを取り分析して発表してきたが、それだけでは人の心に届かないと感じたことが数多くあった。人々が検査結果に納得し、本来の生活を取り戻す方向にいけば役に立つと思うが、必ずしも全てがそうなるとはいえないので難しい」
 
 -国や県はどのような役割を果たす必要があるか。
 
 「放射線への不安を抱える住民を支援する相談員制度は、ギャップを埋めるために重要な取り組みだ。自治体は、相談員として住民の間に入っている保健師らを支え、地元のニーズに応えていくことが必要だ。私のような科学者は相談員が困ったときに後ろから助言できるような立ち位置にいたい」
 
 -福島高スーパーサイエンス部の生徒の研究などに協力している。
 
 「福島の将来を考えると、県内の若者が自信を持って自分が置かれた状況を説明できることが大切になると思う。私から教えるのではなく、何かを知りたいという生徒の自発的な思いを応援していきたい」
 
 はやの・りゅうご 岐阜県出身。東京大大学院理学系研究科修了。同大理学部物理学科准教授を経て、平成9年から同大学院理学系研究科教授。専門は原子物理学。コピーライターの糸井重里氏とともに、対談形式で放射能の知識を伝える「知ろうとすること。」(新潮文庫)を出版した。64歳。

カテゴリー:震災から5年