ワールドロボットサミット福島大会

-災害対応用クローラーロボット-

MISORA 世界2位   南相馬の技術 結集

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 南相馬市原町区の福島ロボットテストフィールド(ロボテス)で2021(令和3)年10月8日から10日まで開かれた国際競技会「ワールドロボットサミット(WRS)2020」福島大会のインフラ・災害対応部門災害対応標準性能評価種目で、南相馬ロボット産業協議会の「MISORA(ミソラ)」が世界2位となる準優勝に輝いた。ミソラは地元企業11社が力を合わせて作った災害対応ロボットで、日本機械学会長賞にも選ばれた。初めての競技会出場だったが、経験豊富な大学勢など他のチームと互角以上に渡り合い、ロボット産業の振興に力を入れている南相馬の実力を国内外に示した。 

 南相馬ロボット産業協議会は「メイド・イン・ミナミソウマ」の技術を世界に発信するため、金属部品や電気回線を製造する地元企業の英知を集めてミソラを作った。2019(平成31)年1月に本体設計を開始。ソフトウエアやハンド、アームなどの製造を分担し、約1年で完成させた。ベルト状の車輪(クローラー)で不整地を難なく走行できる。ロボットのアームやクローラーなどを模したコントローラーで動かせるようにした。 

 福島大会では東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の被災地の復興をアピールするとの思いで挑んだ。大規模災害発生時に役立つ独自のロボットやシミュレーション技術で世界の頂点を目指した。 

ワールドロボットサミット福島大会で競技に臨むミソラ(中央)。多くの課題をクリアし、世界2位に輝いた=2021年10月8日、南相馬市原町区の福島ロボットテストフィールド

 小高産業技術高のロボット研究部に所属する境孝平さん(17)=電気科3年=と荒将斗さん(16)=同2年=が操縦を担当した。放課後を中心にロボテスなどで練習を重ね、腕を磨いた。 

 境さんは「南相馬のロボット技術の高さを示せた」と胸を張った。タケルソフトウェアの山崎潤一代表(52)は隣席でカメラ映像を見ながら的確な指示を送った。「私たちのものづくりが世界に認められた。普段は競合している会社が一台のロボットを作ったことに大きな意義を感じる」と語った。 

 協議会の五十嵐伸一会長(66)=YUBITOMA代表=は「南相馬の技術を世界に知ってもらう絶好の機会になった。今回の好成績を地元製造業の発展につなげたい」と意気込んだ。 

 市ロボット産業推進室の担当者は「国際大会であるワールドロボットサミットでミソラが第2位になったことは地元のものづくり企業の技術の高さを評価してもらえたものだと思う」とした上で、「これを新たなビジネスチャンスにつなげ、市内のロボット産業を行政と一緒に盛り上げてほしい」と期待している。 

強豪と互角に戦い快挙 競技を重ねスキルアップ

◆ミソラの開発企業 

・YUBITOMA 

・タケルソフトウェア 

・菊池製作所 

・タカワ精密 

・シンコー 

・相馬製作所 

・工製作所 

・花沢技工 

・ハヤシ精機 

・栄製作所 

・ワインデング福島 

     (順不同) 

 審判が課題をクリアしたことを示す白旗を上げると、協議会関係者や来場者から大きな歓声が起こった。南相馬ロボット産業協議会はワールドロボットサミット福島大会で、災害対応ロボットのカメラでメーターの数値を読んだり、アームやハンドを動かしてバルブを操作したりする能力を競う種目に出場した。ミソラの難題に立ち向かう姿は観衆を魅了し、勇気や感動を与えた。 

 当初は大会出場そのものが目標だったが、協議会は競技を重ねるごとに躍進し、決勝ではメンバー全員が一丸となって世界一を目指した。競技終了後、メンバーは「南相馬の技術力を世界に発信できた」と口をそろえた。 

 競技はロボットの電源を入れるところから始まる。開発チームの会長を務めた鈴木力さん(69)=栄製作所社長=は「ミソラは他のどのチームよりも立ち上がりが早かった。そこにも技術力の高さが表れていた」と誇らしげに語った。 

 ミソラのアーム部分を作ったタカワ精密取締役の渡辺光貴さん(40)は「高所で作業できるようにアームを長くしなければならず、長さと強度のバランスを取るのに苦労した」と振り返る。ハンド部分の設計・開発・製作をした菊池製作所南相馬工場開発部長の高橋敏志さん(59)は「3Dプリンターを使い、試行錯誤しながら、さまざまな競技に対応できるように工夫した」と話している。 

 操縦役を担った小高産業技術高のロボット研究部に所属する電気科3年境孝平さん、同2年荒将斗さんは、高校生ながら大学生らの強豪チームと互角以上に戦い、初出場にして世界2位の快挙を成し遂げた。 



高校生と大人バランスよく チーム関係者4人座談会 心境や今後の抱負語る

 県内に明るい話題を届けたチーム関係者四人は座談会に臨み、競技中の心境や、世界二位を裏付けたエピソード、今後の抱負などを語り合った。 

 操縦を担当した小高産業技術高電気科3年の境孝平さん(17)は自分で作ったロボットの性能を競う「ロボコン」の出場経験を生かした。「緊張したが、ロボコンほどではなかった。競技が始まると平常心で臨めた」と振り返った。同じく操縦役の同科2年の荒将斗さん(16)は「機体をぶつけて壊しかけたことが何度かあった」と苦労したことを話し、「ミスもあったが、世界二位はうれしい。いい経験になった」と喜んだ。 

 機体のシステム制御を手掛けた山崎潤一さん(52)=タケルソフトウェア代表=は災害対応を想定したコントローラーを開発した。「誰でも直感的に操縦できるようにミソラと同じ形にし、連動して動く仕組みにした」と特長を紹介。取り扱い説明書がないことにも触れ、「操縦役の高校生には口頭で教えただけなのに、みるみる上達して驚きの連続だった。機体の性能の向こう側を見せてもらった」と感慨深げに語った。 

 境さんと荒さんが活動するロボット研究部顧問の境僚太教諭(34)も「集中力と判断力、論理的に考える力がきらりと光った」と二人を評価し、「高校生と大人のバランスがよく取れたいいチームだった」とたたえた。 

 大会では競技中、操縦者は機体のカメラ映像のみを見ながら動かした。境さんは3Dプリンター製のミソラの手のひらサイズ模型で本番のイメージを膨らませたことを明かし、「車輪の動きなどを事前に確認できたことが好成績につながった」と分析した。 

 南相馬市では福島ロボットテストフィールドを核としたまちづくりが進む。地元の若者向けにプログラミングなどを指導している山崎さんは「世界2位になったロボットを作った者として、自信を持って若い人材育成に力を入れたい」と誓った。 

 小高産業技術高は東北地方で唯1、2021年度から3年間、文部科学省の「マイスター・ハイスクール(次世代地域産業人材育成刷新事業)の指定を受け、福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想を担う人材の育成に取り組んでいる。境教諭は「大会が単発で終わらないような仕組みができればと思う。操縦役の2人には世界に羽ばたいてもらい、日本の産業を引っ張る技術者になってほしい」と期待を寄せた。 

 境さんは「大学に進学し、ロボット分野についての学びを深める。将来、チャンスがあれば地元に戻って来たい」と意気込んだ。荒さんは「ロボットや電気に興味がある。卒業後は地元企業に就職して活躍したい」と目標を掲げた。 


「技術 市内外に広めたい」 南相馬ロボット産業協 五十嵐会長に聞く

 南相馬ロボット産業協議会の五十嵐伸一会長(66)=YUBITOMA代表=は福島民報社のインタビューに応じ、ミソラの製造技術を市内外に広める決意を語った。 

 -大会を終えての感想は。 

 「地元企業11社が手を取り合って作った一台で国際競技会に参加できたことを誇りに思う。他チームでは機体故障が相次ぐ中、ミソラは最後まで大きなトラブルもなく戦い抜いた。競技を通して南相馬のものづくり技術を世界に発信できた」 

 -ミソラの特長は。 

 「専門の操縦者しか動かせない機体では、災害発生時に役に立たない。私たちは機体を模したコントローラーを作り、アームやハンドなどを自在に操れるような構造にした。がれきの上など悪路を想定し、機体の重心を低くした」 

 -今後の目標を。 

 「ミソラを量産するのではなく、メカ、電気、ソフトの各要素の技術を市内外に広める。『こういうロボットがほしい』というニーズに合う機体を製造する。多角的な施策の一つとして、ミソラのブランド化に挑戦したい。実現すれば開発チームを構成する企業の事業に日が当たる。それぞれの製品が世に出るきっかけにもなるだろう」 


企業誘致や人材育成に力 南相馬市 東京支所や創業支援施設開設

 南相馬市は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの被災地の復興と新産業創出を目指すイノベーション・コースト構想に関連し、ロボットやドローン関係企業の誘致や人材育成に力を入れている。

 市は2020(令和2)年に首都圏の人材を市内に誘導しようと、東京都千代田区の日本立地センター内に東京支所を開設した。職員が企業立地や起業に関する情報発信と収集、国や研究機関との連携などに取り組んでいる。

 2020年7月には創業支援などのために原町区萱浜に市産業創造センターをオープンさせた。ベンチャー企業などの研究開発拠点として事務所と工場を備え、現時点で20区画(事務所16区画、工場四区画)のうち16区画に企業が入居している。指定管理者の南相馬インキュベートコンソーシアム(代表・ゆめサポート南相馬)がビジネス講座や地元企業との交流会を開催し、地域の産業振興に貢献している。

 一方、原町区萱浜にある市復興工業団地には企業が続々と進出している。2021年6月には立地第一号としてロボットシステム開発「ロボコム・アンド・エフエイコム」(本社・東京都)の南相馬工場が開所した。同年11月には固定翼型のドローンを開発するベンチャー企業「テラ・ラボ」(本社・愛知県春日井市)の工場もオープンした。

 さらに、生活用品大手のアイリスオーヤマの関連会社「アイリスプロダクト」(本社・仙台市)が人工芝や脱酸素剤などを生産する工場を建設中で、2022年3月の操業開始を目指している。企業からの立地希望も相次いでおり、復興工業団地をはじめ下太田工業団地、信田沢工業団地とも、区画は残りわずかになってきている。


広大な敷地でロボやドローン試験、研究 イノベ構想で整備 南相馬のロボテス

 県が南相馬市原町区萱浜に整備した福島ロボットテストフィールド(ロボテス)は、2020(令和2)年3月に全面開所した。イノベーション・コースト構想の中核施設として、ロボットやドローンにおける最先端の研究拠点の役割を果たしている。 

 南相馬市復興工業団地に隣接する約50ヘクタールの広大な敷地に無人航空機、水中・水上ロボット、インフラ点検・災害対応、開発基盤の4つのエリアを備え、計21の施設がある。高さ30メートルの試験用プラントは配管や煙突を再現し、災害対応ロボットやドローンの実験に対応している。風洞棟では、装置で風速20メートルまでの強風を起こし、飛行中のドローンなどの性能を評価する。 

 南相馬市と浪江町にあるロボテスの滑走路を結び、約13キロの長距離飛行試験も実施する予定となっている。 

 街並みを模した市街地フィールドや水没市街地フィールドでは、警察や消防などによる各種防災訓練も繰り広げられている。 

 研究室には県内外の約20の企業、団体や大学が入居し、ロボットやドローンの開発に取り組み、成果を上げている。 

 2018(平成30)年7月の一部開所から2021年10月末までの約3年3カ月で、5万4300人が施設見学や実験に訪れ、交流人口の拡大や地域活性化にも貢献している。 


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