東日本大震災アーカイブ

「誰かが犠牲に」 霊山・除染ごみ仮置き

佐藤さんが土地を貸した仮置き場=8日、伊達市霊山町下小国

 伊達市霊山町下小国。うっそうとした山林の中に、地ならしされたばかりの空き地が広がる。除染ごみが続々と運び込まれ、土砂や草木が入った大量の袋が置かれていく。

 「嫌々言ってたんでは除染は進まねえ。誰かが犠牲になんねえと」。山林を所有する農業佐藤幹夫さん(70)は9月、除染ごみの借り置き場として、休閑地になっていた約1400平方メートルの土地を市に貸した。自宅は、東京電力福島第一原発事故の影響で8月に特定避難勧奨地点に指定された。除染が進まないと避難した住民が戻れない。

 土地の提供を申し出た際、近隣住民の多くは喜んでくれた。10月下旬から市による除染がようやく始まった。地域で排出された除染ごみは、この仮置き場に置かれている。

 10月末には仮置き場から約100メートル離れた民家で除染が行われた。マスク姿のボランティアらが数時間かけて庭の草を刈り、落ち葉を掃いた。ポリ袋がみるみるうちに増えていく。周囲には、まだ手付かずの林や田畑が広がる。「とにかく全部除染してもらいたい。でも無理かも知れないね」。佐藤さんはつぶやく。

 除染はしなければならないが、汚染廃棄物が近くに置かれるのは困る-。「総論賛成、各論反対」の状態が続く中、市は三カ所を確保した。それでも十分ではないという。環境省は、県内で出る除染ごみの量を1500万~3100万立方メートルに上ると試算する。仮置き場の確保が急務だが、住民の反対で設置にめどが立たない市町村が多い。


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