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濁流に突入、女性救う

いわき市平消防署 四倉分署

■3月11日
【午後2時49分】
 沿岸部に大津波警報発令

 いわき市平消防署四倉分署長の黒沢正明(57)は大津波警報発令を受け、沿岸部の住民に避難を呼び掛け始めた。6号国道を北上中、津波の被害から逃れようと沖に向かう漁船が見えた。
 久之浜町金ケ沢地区に移動していた際、目の前の集落から水しぶきが上がった=地図(1)=。何が起きたのか、すぐには分からなかった。
 JR常磐線のガード下をくぐろうとした瞬間、大量のがれきとともに濁流が押し寄せてきた=地図(2)=。「もしガードをくぐっていたら...」。黒沢は背筋が凍り付く思いがした。それ以上前に進めず、市久之浜・大久支所に引き返すことにした。支所に戻る途中、立ち木につかまり、首まで水に漬かっている女性を確認。近くにいた男性の手を借り救出した=地図(3)=。
 四倉分署救急2係長の鈴木征宏(55)は津波が分署に押し寄せた際、6号国道の反対車線に50歳ぐらいの女性がいるのを発見した=地図(4)=。隊員が分署から飛び出し、女性の下に走った。
 この時、茶色い濁流が分署の階段の踊り場まで押し寄せてきた。鈴木は隊員に向かって叫んだ。「大丈夫か」。しかし、返事はなかった。隊員は女性を抱えて道路のフェンスにつかまり、必死に津波に耐えていた。
 津波が引いた後、分署に近隣住民約30人が避難してきた。寝具や着替え、毛布などを提供し、仮眠室を開放した。午後5時ごろ、全員を四倉高に避難誘導した。高齢者は背負って運んだ。


【午後3時44分】
 久之浜地区で火災発生

 久之浜地区では地震後、火災が起き、延焼し続けていた=地図(5)=。分署長の黒沢は避難広報に当たっていた署員と合流し、地元消防団員の協力も得て消火活動に当たろうとした。しかし、がれきで出入り口をふさがれた住民が民家の2階から助けを求めていた。別の住民は駆け寄り、伝えた。「建物に人が取り残されている」。まずは人命救助を優先した。
 消火作業は難航した。地下にある消火栓の上に乗用車が止まっていた。数人掛かりで動かし、放水を始めても、大量のがれきに火が次々と燃え移り、追いつかない。消火栓からは十分な水量を得られず、消防団の車両を中継して川からも取水した。
 午後11時ごろ、本部から「10メートルの津波が来る」との無線連絡が入る。津波は結局来なかったが、作業の中断を余儀なくされた。火は翌日の午前7時まで燃え続け、約50棟が全焼した。
 「やれることはやった。ただ、もっと早く消し止められれば」。黒沢には悔しい気持ちしか残らなかった。
 四倉分署は大きな被害を受け、通信手段を失った。11日夜、市四倉支所に拠点を移した。

カテゴリー:3.11大震災・検証

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