■茨城放送杯吟詠コンクール準優勝 原町の自宅が警戒区域 西京子さん(57)
東京電力福島第一原発事故で警戒区域から避難している南相馬市原町区下江井の西京子さん(57)は、8日に茨城県ひたちなか市で開かれた茨城放送杯吟詠コンクールで準優勝した。自宅に戻れない中、河川敷で前向きに詩吟に取り組んでの好成績で、関係者が称賛を贈っている。
西さんの詩吟のキャリアは14年。浪江町の天山流宗家沢上吟●さんに学び、平成22年にクラウン専属の吟士になった。全国大会で入賞し、CDも出した。
大震災で津波が自宅近くに押し寄せた。今でもテレビの津波の映像を見ることができない。原発事故を機に大熊町の会社を退職し「詩吟に打ち込んでみよう」と決めた。避難先の湯川村から、昨年6月に南相馬市で働く息子と一緒に同市原町区の借り上げアパートに移った。
自宅には思い切り声を出せる練習室があったが、今の練習場所は新田川河川敷のすずり岩公園だ。車の中でCDを聞きながら吟じることも多いが「やればできる」と前向きに考えている。石川町の天山流支部に所属し、月1回は東京でも研修する。
茨城放送杯は何回もの予選を勝ち抜いた20人が競うレベルの高い大会。独吟の部で「後夜仏法僧鳥を聞く」を吟じた。これまでは4位が最高。練習不足の中での準優勝は「信じられなかった」という。出身地の紹介に「あの南相馬市から」と、会場がどよめいた。南相馬市原町区小浜出身で水戸市在住の大内洋子さん(70)が、駆け寄って励ましてくれた。
全国吟詠コンクール県予選会の一般二部で優勝しており、次の目標は7月8日の東日本大会を勝ち上がっての全国大会出場。「誰かのせいにしたくない。警戒区域見直しも、帰って練習できると励みになる。目標があるから楽しめる」と、きょうも前を向く。
※●は王ヘンに秀
(カテゴリー:連載・今を生きる)