東日本大震災

「連載・原発大難」アーカイブ

  • Check

再編/小高からの報告(48)賠償の行方不透明 交渉長期化 心配する声も

県内外の避難先から住民が集まった賠償説明会=2月5日、南相馬市民会館

 集団申し立ての参加は全世帯の20%に達している。
 東京電力への損害賠償請求で南相馬市小高区の住民は行政区長連合会が中心となって、政府の原子力損害賠償紛争解決センターに集団申し立てしている。行政区が主導する損害賠償請求の計画、実行は県内唯一だ。
 2月に南相馬市民文化会館で開かれた説明会には、収容人数を超える約1500人が全国各地の避難先から殺到した。10日現在、約3700世帯のうち約750世帯が小高区弁護団に申し立てを依頼。弁護団は15日、郡山、福島両市に避難している12世帯35人分を第1弾で申し立てた。今月末には旧警戒区域以外の南相馬市や相馬市に避難している多くの住民の申し立てを予定している。
 避難の費用、生活費の増加分、収入の減少分、精神的な損害に対する慰謝料などの請求項目のうち住民の関心が高い1つが不動産価値の減少分の算定だ。
 区域再編で立ち入りが自由になったものの、自宅に戻るたびに変わり果てた姿に絶望的な気持ちにさせられる住民は多い。雨漏りしたままだった室内の床はぼろぼろ。いつの間にか住み着いた豚のふん尿の臭いが屋内に染み付いて取れない家もある。
 集団申し立ての参加者で、相馬市の借り上げ住宅に避難している無職吉岡智佐子さん(51)は小高区飯崎の自宅のローンが21年残っている。3年前に建てたばかりだった自宅のドアは避難中、野生化した牛に壊されていた。あまりの惨状にこの家で住むのは諦めた。「東電はこの現状を理解した上で財物の賠償基準を示してくれるのだろうか」。吉岡さんは東電への不信感をあらわにする。
 弁護団は損害の算出に時間がかかる財物の賠償は初回の集団申し立てでは項目に含めていない。弁護団事務局長の小海範亮弁護士らは再編後、小高区に立ち入り、建物の状態をビデオで撮影している。今月中にも雨漏り家屋10世帯を一級建築士とともに調査し、修理などに掛かる費用を算出し、次回の申し立てに反映させる方針だ。
 弁護団の渡辺真也弁護士は「何100年も住むつもりで建てた古い屋敷に東電が十分な賠償を提示するかは疑問に思う。センターが適切な和解案を提示しない可能性もある。場合によっては集団訴訟に踏み切ることも考えられる」と一切の妥協を許さない姿勢だ。

 一方、集団申し立てを取り下げるケースもある。
 1度は弁護団に依頼しながら、参加を取り下げたケースが約20世帯あった。原発事故で職を失った若い世代は早く新しい生活をスタートさせたい。時間がかかる和解仲介の成立まで待ち切れない-。賠償の中身で妥協しても東電への直接請求で早期の賠償金受け取りを選択するケースが増えている。小高区行政区長連合会の佐藤周一事務局長(63)は「集団申し立ては金が手元に来るのに時間がかかるのは確か。職をなくし切羽詰まった状況の中で『明日の金が必要』という声もよく聞く。しかし、それは東電の思うつぼだ」と危機感を募らせる。
 センターは6日、和解手続きを遅らせているケースがあるとして東電の姿勢を批判。不当な遅延には年5%の遅延金を上乗せする制度を設けた。賠償金の支払いの遅れが被災者の再起の遅れにもつながっている。(「小高からの報告」は終わり)

カテゴリー:連載・原発大難

「連載・原発大難」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧