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【本県果樹】モモ価格震災前の水準 除染、PRが成果 ナシ生産者も期待

収穫を待つモモの出来を確かめる佐藤さん=23日、桑折町

 東京電力福島第一原発事故の風評被害の影響を受けていた県産モモは、今季の市場価格が震災前の価格にほぼ持ち直し、果樹生産農家にとって復興の兆しが見える結果となった。除染や放射性物質検査結果の周知で消費者の理解が深まったことが要因とみられる。関係者の県内外での懸命なPRも成果を上げた形だ。今後、果樹市場の主力はナシに移り、生産者らは期待を寄せている。

■もっと出荷して
 「農家の誇りを維持し、生産に励んできたかいがあった」。桑折町にあるJA伊達みらい桃生産部会桑折支部副支部長の佐藤徳雄さん(63)は主力品種「あかつき」の出荷が終わった。例年並みの価格に戻ったことに胸をなで下ろす。
 昨年の農園の売り上げは風評被害で例年の約3割に落ち込んだ。収穫期を迎えても「消費者に買ってもらえないんじゃないか」という不安が尽きなかった。これまでの売り上げは例年の7割。「まどか」と「川中島」の出荷が残るが、品質維持に力を注いできた自負がある。
 県産モモの市場価格は昨年と比べ大きく変化した。JA伊達みらいによると、「あかつき」の単価は昨年に比べ、約7割増の1キロ当たり380円ほど。原発事故前に近い価格まで回復した。JA新ふくしまでも、昨年は例年の3、4割まで下落したが、今年は9割程度まで持ち直したという。同JAの担当者は「今年は小ぶりだったことを考えると、価格は例年と比べて遜色ない」と手応えを見せる。
 消費者からの贈答用の注文も回復してきた。昨年は風評被害で贈答用が落ち込み、農家からJAへの出荷量が大幅に増えたが、JA新ふくしまによると、昨年約3900トンだったあかつきの出荷量は今年は約2700トンと約7割にとどまる見込み。JA伊達みらいも昨年の約4500トンから今年は約3200トンに減る予定。
 福島市飯坂町東湯野の伊藤隆徳さん(65)は「昨年大幅に減った個人への直接販売が回復した。価格もだいぶ戻ってきている」とうれしさを隠せない。妻のアサさん(65)と毎日午前5時から果樹畑でモモの収穫と贈答用の箱詰めに励む。
 一方、国内全体の流通量も価格の回復に影響しているようだ。JA新ふくしまの担当者は「生産地の山梨県の出荷量が少なく、市場からもっと出荷してほしいという声もある」と話している。

■積み重ね
 価格などの持ち直しについて県は、モモ農家の徹底した除染対策を要因に挙げる。
 放射性物質のモニタリング検査でほとんどの検体が「検出下限値未満」との結果が出ている事実の積み重ねが評価されていると分析。対象を広げたJAなどの自主検査でも同様の結果が出ていることが裏付けとして消費者に伝わっているとしている。
 また、モニタリング検査の結果などを基に、県や市町村、各JAなどが安全性を消費者に伝えるPR活動に力を注いだことも、風評の低減に結びついているという。
 県の担当者は「今でも福島県というだけで拒否反応を示す消費者がいるのも事実。引き続き粘り強く安全性を訴えていく」と強調した。
 23日、福島市のJA新ふくしま農産物直売所ここら矢野目店で県産モモを購入していた市内笹谷の主婦(51)は「検査をしっかりしているという話をよく聞くので、安心して買うことができる。近所でも検査結果を見て買うようになったという人は多い」と購入理由を説明した。

■弾みがつけば
 モモに続き、ナシの収穫が産地の福島市やいわき市などで本格化している。
 JA新ふくしまによると、昨年はモモほどではないが、例年に比べ、5%程度価格が下がった。今年は雨が少なく、やや小ぶりだが、味は上々だという。同JAの担当者は「モモの復調の兆しを受け、ナシにも弾みがつけば」と、くだもの王国福島の復興を望んでいる。
 JAいわき市によると、今年の価格は昨年の1キロ当たり200円から例年並みの300円程度まで回復しているという。甲高光経営管理委員会長は「モニタリング調査の結果からも消費者に安心してもらえると思う。震災前のように売れてほしい」と期待している。

【背景】
 昨年は風評被害の影響で贈答用の出荷が激減。豊作だった影響もあり、モモの市場価格は例年の半値以下に値崩れした。JA新ふくしまやJA伊達みらいは農家と一緒に一冬かけてモモの木の幹を高圧洗浄機で洗い流すなどの除染作業に取り組んできた。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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