東日本大震災、東京電力福島第一原発事故から2年がたとうとしている。かつての環境を取り戻そうと、県内各地で除染が行われている。取り組みを支援してきた日本原子力研究開発機構(JAEA)福島技術本部福島環境安全センターの時沢孝之技術主席に、これまでの取り組みと課題などを聞いた。
−JAEAについてあらためて教えてほしい。
「原子力に関するわが国唯一の総合的研究開発機関だ。東京電力福島第一原発事故を受けて、一昨年5月に福島市に事務所を置いた。内閣府や環境省の除染事業への協力・支援を行っているほか、環境省や福島県などからの要請を受け、各専門分野に精通した技術者・研究者を派遣している」
−事故前から国内の除染技術開発は進んでいたのか。
「原子力施設の汚染対策やウラン鉱山の環境修復などで、国内でも除染やそれに相当するさまざまな技術はあった。しかし、今回の事故のように、屋外の広範囲に放射性物質が拡散した事例は国内にはなく、最初は海外の報告書を参考に、どの程度の低減が可能か、どれくらいの人員が必要なのかといったことを確認することが必要だった」
−技術実証事業の主な成果は何か。
「内閣府、環境省の下で企業や大学などから、数百件にも及ぶ技術提案を受け、有望と判断されたものを検証した。画期的な除染の新技術を生み出すことは可能だろうが、除染のコストや効率などを考えると、まだ多くの課題がある。ただ、既存技術も高度化しており、徐々に現場に適用されてきている」
−具体的には。
「例えば、高圧洗浄がある。家庭用の20倍強の超高圧でアスファルトやコンクリートを洗えば、表面を薄く剥がすことができる。廃棄物も少なく、除染効果も高い。現場での経験を生かし、さらにさまざまな改良がされている」
−除染の効果を疑問視する向きもある。
「多くの放射性物質は土に強固にくっつき、表面部分にとどまっているので、これを適切に除去できれば広い面積で線量を下げることができるのは確かだ。何もせず自然に放射線量が下がるのを待つよりも、除染をすれば確実に線量が下がる」
−除染をさらに進める上での課題は何か。
「環境中の放射性物質の長期的な動きを調査する。森林や河川をどのように移動するのか、しないのか、たまる所があるのか。しっかり調べることで、将来的な対策の『攻め方』が見えてくる」
ときざわ・たかゆき 岡山県鏡野町生まれ。信州大繊維科学工学科卒。昭和55年、旧動力炉・核燃料開発事業団に入社。放射性廃棄物処理貯蔵施設の立地計画や、ウラン濃縮関連施設の廃止措置計画などの業務に携わり、平成23年5月から福島市の事務所に勤務。56歳。
(カテゴリー:震災から1年11カ月)