震度6強で倒壊の可能性がある建物の耐震改修を努力義務とした改正耐震改修促進法の11月の施行に合わせ、県は13日までに、民間施設の改修費用を補助する方針を固めた。県内では同法に基づき、ホテル・旅館、病院など民間施設約100棟が耐震診断を義務付けられるとみられる。県は「耐震改修が必要と判断される建物が複数出る」と見ており、民間の費用負担を軽減する狙いがある。県は一般家庭に対する現行の耐震改修の補助制度を参考に新たな支援策を検討する。
ホテル・旅館など大規模建築物で耐震改修工事を実施する場合、費用は数千万円から数億円かかるとみられる。法施行は4カ月後に迫ったが、行政による財政支援の枠組みは整っていない。県内の観光業界などは東京電力福島第一原発事故の風評被害で厳しい経営環境が続いており、県は補助制度創設が必要と判断した。
県は木造住宅を対象とした耐震改修の補助制度などを参考に、新たな支援策を設ける準備を進めている。現在、木造住宅に対しては市町村が補助した場合に、そのうちの4分の1を県が負担している。ただ、大規模建築物の場合は多額の費用がかかるため、市町村の財政に配慮した制度設計を検討する。
改正法の対象は、震度6強以上の揺れに備えた耐震基準が採用された昭和56年より前に造られた大規模建築物。延べ床面積が5千平方メートル以上で不特定多数の人が利用する施設が該当する。
県によると、対象建築物は県内に少なくとも300棟あり、学校などの公共施設が約200棟、ホテル・旅館、病院などの民間施設が約100棟だという。
対象建築物は平成27年末までに耐震診断を受けることが義務化される。1棟当たり200~300万円程度かかるとみられ、国が3分の1を補助する。建物の所有者は結果を県に報告し、県はこれを公表する。診断拒否や結果の虚偽報告は所有者に罰金が科される。
民間施設の場合、耐震診断を受けたことがない建物が多く、県建築指導課は「耐震改修が必要と診断される建物が少なくない」と見ている。強度不足の診断結果が出ても改修工事は強制はされない。しかし、「結果が明らかになることで客足が遠のいてしまう」(ホテル関係者)ため、必然的に改修を迫られるとの見方も出ている。
福島市内の旅館経営者は「原発事故の風評被害が続いている。耐震改修工事の費用負担を迫られたら、廃業に追い込まれる可能性がある」として県に支援を求めている。
◇ ◇
改正耐震改修促進法の診断対象になるとみられる約200棟の公共施設について県と市町村などは順次、改修工事を進めている。
()