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【震災から5年】「県民健康調査」 健康影響は確認されず WBC受診28万人超

 
 ■内部被ばく累積線量1ミリシーベルト未満99・99%
 
 県は体内に取り込まれた放射性物質の量を調べるため、ホールボディーカウンター(WBC)を活用し内部被ばく検査を実施している。車載のWBC8台を所有し、学校や公共施設などを巡って検査している。
 県が実施した平成23年6月から昨年末までの検査結果は【表】の通り。これまで28万848人が受診した。
 成人で今後50年、子どもで70歳までの内部被ばく累積線量を示す預託実効線量が1ミリシーベルトを超えたのは全体の0・009%に当たる26人。99・99%に当たる28万822人が一ミリシーベルト未満だった。県は「全員、健康に影響が及ぶ数値ではない」とみている。
 県内では、県のWBCのほか、平田村のひらた中央病院や福島市の県労働保健センターなど約30施設でWBCを導入している。ひらた中央病院は、乳幼児の検査ができるWBC「ベビースキャン」も配備している。
 
■ひらた中央病院 乳幼児専用機器を導入 2396人検査、広がる安心感
 平田村の公益財団法人震災復興支援放射能対策研究所は、東京電力福島第一原発事故後の平成23年からホールボディーカウンター(WBC)による内部被ばく検査をひらた中央病院で続けている。延べ約5万人を検査した。乳幼児の検査ができるWBC「ベビースキャン」も備え、小さな子どもを持つ親の不安解消に努めている。研究所によると、検査の結果からこれまでに放射線の影響は見られないという。
 ベビースキャンは25年に導入した。体の小さな乳幼児の状態をより精密に測定するためで、乳児から身長135センチまでの子どもが対象。導入時から1月末現在で延べ2396人を検査した。
 対象者は子ども専用の検査衣に着替え、ベビースキャンの中に入る。4分ほどで測定が終わる。検査を受ける人は、ほとんどが甲状腺検査とセットにして受けている。エコー機器で甲状腺の状態を調べ、尿を採取する。小学生以上は採血もする。
 一週間程度で結果が出て、再び来院してもらい医師が直接、伝えている。医師が丁寧に説明することで子どもや親に安心してもらえるという。
 内部被ばく検査は18歳以下を無料としている。研究所はこれまで検査の結果を基に放射線の影響を調べる研究を続けており、定期的に結果を公表してきた。
 佐川文彦理事長(56)は「県民や子どもたちに安心感を持ってもらうためにも検査を続けたい」と話す。
 
■昨年12月の県民世論調査 46.8%、前回比0.3ポイント減 「生活で放射線を意識」減少傾向
 福島民報社と福島テレビが震災と原発事故後から共同で実施している県民世論調査では、「普段の生活で放射線を意識しているか」との質問を設けている。昨年12月に実施した第12回調査で「意識している」と回答したのは全体の46・8%。前回(11回)調査の47・1%に比べ0・3ポイント減った。
 過去の調査で「意識している」、「意識していない」と回答した人の割合は【グラフ】の通り。
 「意識している」は平成24年4月の第一回から第9回まで60%台、50%台と徐々に減少してきた。昨年6月の第10回以降は40%台で推移してる。
 一方、「意識していない」は第一回から第8回までは20%台で推移。第9回で30%台となり、第12回では44・4%となった。
 
■24年から回復傾向 県内の合計特殊出生率
 合計特殊出生率は原発事故などの影響で事故後、マイナス傾向にあったが、平成24年以降、回復傾向にある。26年は事故前の水準を超える1・58で、東日本で最も高かった。
 20年以降の本県と全国の合計特殊出生率の推移は【グラフ】の通り。
 事故前の22年は1・52だったが、23年が1・48、24年は1・41まで下がった。一方で25年は1・53まで回復。上昇幅は25年から2年連続で全国最大となった。
 
■2年連続で増加 県内の里帰り出産件数
 里帰り出産件数は原発事故発生後、減少傾向にあったが、平成24年以降、回復傾向にある。
 県産婦人科医会の調査で継続回答している25医療機関で扱った里帰り出産件数の推移は【グラフ】の通り。
 平成22年は2290件だったが、事故後の23年は1476件、24年は1246件にとどまった。
 一方、25年は1659件、26年は1704件と2年連続で増加に転じた。
 
■東大大学院理学系研究科教授 早野龍五氏に聞く 結果認識に差異ケア大切
 原発事故を受け、県内では県民健康調査や子どもの甲状腺検査が行われている。放射線の健康影響を調べている東大大学院理学系研究科の早野龍五教授(64)に聞いた。
 
 -外部被ばく線量を推計する県民健康調査の問題点は。
 
 「回答率が低いことが課題になっているが、原発事故から5年近くが経過し、今の段階では当時どのように行動をしたかを答えることは難しいと思う。携帯電話の衛星利用測位システム(GPS)のデータが活用できれば個人の行動を追い掛けるには有効だ」
 
 -甲状腺検査の結果についてどう考えるか。
 
 「検査はまだ二巡目の本格検査の途中であり、結果について放射性物質の影響だと確定的に言う段階ではない。もし、原発事故との因果関係を問うなら、甲状腺がんと疑われる人が受けた線量を把握することが大切になる。検査を始めた以上は甲状腺がんと診断された子どものケアは重要だ。家族に丁寧に説明し、経済的に不利にならないようにする必要がある」
 
 -県内各地で内部被ばく検査などを行ってきた。
 
 「平田村のひらた中央病院など県内3病院で内部被ばく検査を受けた乳幼児ら全員から放射性セシウムは検出されていない。県内では、計測して放射性物質が検出されないことと、人々が結果に納得するということのギャップをどのように埋めるかが大きな課題になっている。私は科学者の活動としてデータを取り分析して発表してきたが、それだけでは人の心に届かないと感じたことが数多くあった。人々が検査結果に納得し、本来の生活を取り戻す方向にいけば役に立つと思うが、必ずしも全てがそうなるとはいえないので難しい」
 
 -国や県はどのような役割を果たす必要があるか。
 
 「放射線への不安を抱える住民を支援する相談員制度は、ギャップを埋めるために重要な取り組みだ。自治体は、相談員として住民の間に入っている保健師らを支え、地元のニーズに応えていくことが必要だ。私のような科学者は相談員が困ったときに後ろから助言できるような立ち位置にいたい」
 
 -福島高スーパーサイエンス部の生徒の研究などに協力している。
 
 「福島の将来を考えると、県内の若者が自信を持って自分が置かれた状況を説明できることが大切になると思う。私から教えるのではなく、何かを知りたいという生徒の自発的な思いを応援していきたい」
 
 はやの・りゅうご 岐阜県出身。東京大大学院理学系研究科修了。同大理学部物理学科准教授を経て、平成9年から同大学院理学系研究科教授。専門は原子物理学。コピーライターの糸井重里氏とともに、対談形式で放射能の知識を伝える「知ろうとすること。」(新潮文庫)を出版した。64歳。

 

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