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【震災から5年6カ月】「放射線影響考えにくい」 県民健康調査検討委が示す

 東京電力福島第一原発事故後、県と福島医大が実施している子どもの甲状腺検査は2巡目を終えるなど一つの節目を迎えた。甲状腺がんと確定した子どもは131人となったが、県民健康調査検討委員会は「現時点で放射線の影響は考えにくい」との見方を示している。一方、専門家からも因果関係は認められないとする報告が相次いでいる。

 県民健康調査の一環で実施している子どもの甲状腺検査は平成26、27の両年度で二巡目(本格検査)を終えた。26万7769人を調べたが甲状腺がんと確定したのは30人で、23年度から25年度までに実施した1巡目(先行検査)と合わせると131人となった。がんの疑いは先行検査が14人、本格検査が27人で計41人だった。
 本格検査の市町村別の検査結果は【表】の通り。本格検査でがん、もしくはがんの疑いと診断された57人の内訳は男性25人、女性32人。原発事故後4カ月間の外部被ばく線量が推計できたのはこのうち31人で、最大は2・1ミリシーベルトだった。11人が1ミリシーベルト未満だった。
 3巡目の甲状腺検査が28年度から29年度にかけて行われている。原発事故発生時に18歳以下だった人に加え、事故からおよそ1年たった平成24年4月1日までに生まれた人を対象にしている。

■健康管理・放射線量を巡る動き(平成28年3月11日以降)
3月30日 ▼県が県民健康調査の中間取りまとめを発表。福島第一原発事故の外部被ばく線量などについて「健康影響が認められるレベルではない」などの見解を盛り込んだ
4月 4日 ▼福島医大の「ふくしま子ども・女性医療支援センター」が開所
4月10、11日
     ▼いわき市で福島第一廃炉国際フォーラム開催。経済協力開発機構(OECD)、原子力機関(NEA)の関係者が食品中の放射性物質濃度について基準の新設を提案
4月18日 ▼福島医大先端臨床研究センターが開所
4月25日 ▼楢葉町のふたば復興診療所で無料の内部被ばく検査を開始
5月7、8日
     ▼相馬市で「こどもと震災復興 国際シンポジウム2016」開催。「原発事故後の被ばくと甲状腺がんの関連性は現時点で認められない」などとする発表があった
5月31日 ▼県民健康調査データを学術研究で活用するルールを考える県民健康調査検討委員会の部会を初開催
6月 6日 ▼県民健康調査検討委員会が福島市で開かれ、本格検査でがん、がんの疑いとなった子どもの人数などを報告
7月 6日 ▼日本原子力研究開発機構(JAEA)が避難区域の住民が地元で生活を再開した場合の年間追加被ばく線量の推計値を公表。調査対象者の半数以上が年間1ミリシーベルト以下だった
8月23日 ▼「3・11甲状腺がん家族の会」が県に甲状腺検査の拡充を要望
8月25日 ▼県小児科医会が県に甲状腺検査の在り方の再検討を要望

■低年齢発症ほとんど見られず

 甲状腺がんと確定したのは131人に上っているが、県民健康調査検討委員会の委員は原発事故が要因とは考えにくいとする見解を示している。
 高村昇委員(長崎大原爆後障害医療研究所教授)らは、子どもたちの中でも放射線の影響を受けやすいとされる低年齢の発症がほとんど見られない点などを理由に挙げている。影響の有無を判断するには、年齢や内部被ばく線量の推計などをさらに詳しく調べる必要があるとの意見も出ている。

■有病率 関連見られず 福医大

 福島医大放射線医学県民健康管理センターの大平哲也教授ら同大のグループは、原発事故による外部被ばく線量の程度と、甲状腺検査で甲状腺がんが見つかった18歳以下の割合(有病率)に関連は見られなかったと発表した。
 大平教授らは甲状腺検査(平成23年10月から27年6月)を受診した30万476人を対象に調査した。
 原発事故後4カ月の生活状況などを把握する県民健康調査の基本調査で分かった個人の外部被ばく線量の結果を基に、県内を市町村単位で(1)外部被ばく線量が5ミリシーベルト以上の人が1%以上(2)外部被ばく線量が1ミリシーベルト以下の人が99・9%以上(3)それ以外-の3つの地域に分けた。その上で、甲状腺がんの有病率を指標化すると、最も線量が高い(1)が10万人当たり48、最も低い(2)が同41、(3)が同36で「地域間で違いはみられなかった」とした。
 さらに、甲状腺検査と基本調査を共に受けた12万9321人を調べたが、個人の外部被ばく線量と甲状腺がんが見つかった人の割合に関連は見られなかったという。
 大平教授は「今回は原発事故後4年間に限った内容。目立った変化がないか今後も調べていく必要がある」としている。
 一方、5月に相馬市で開かれた「こどもと震災復興 国際シンポジウム2016」で、福島医大臨床検査医学講座の志村浩己主任教授は甲状腺検査の結果を基に、がんの発見率が地域間で大差がないと指摘。「被ばく線量の低さを考えるとがんの発生は考えにくい」と発表した。

■県民基本調査 回答率は依然低調
 原発事故発生から4カ月間の外部被ばく線量を推計する基本調査の回答率は依然、伸び悩んでいる。県は調査票の書き方を支援する事業に取り組んでいるが3月末現在の回答率は27・5%で、前年同期からの伸びは0・4ポイントにとどまっている。
 調査は23年3月11日時点の県内居住者約205万人を対象に実施している。今年3月末での回答者は56万5380人。相双地方の回答率は46・0%で最も高く、19万5604人のうち8万9999人が答えた。最も低いのは南会津地方の20・7%。3万789人のうち調査票を提出したのは6386人。
 調査の結果、県全体の62・1%に当たる28万7225人の被ばく線量が平時の年間上限とされる1ミリシーベルト未満となった。

■県民健康調査データの提供ルール 年度内に骨子案

 原発事故後の県民の体調や放射線被ばく量、心の状態などの調査結果について研究が進めば、健康を守るためのさらなる知見が得られると期待される。県民健康調査検討委員会は5月、県民健康調査のデータを学術研究に提供する際のルールづくりを始めた。今年度内に5回程度、会合を開き、骨子案をまとめる予定だ。
 県民健康調査検討委員会のうち、県、福島医大、県医師会、県弁護士会の関係者らでつくる検討部会が協議している。データを提供する研究の内容や相手の機関・団体、調査対象者に同意するかどうか確認する必要性、不適正利用に対する措置などについて意見を交わしている。
 個人情報の保護に配慮し、匿名化の方法などについても方針を定める。

■県内の放射線量減少傾向が続く JAEAモニタリング

 日本原子力研究開発機構(JAEA)は原発事故後、県内の放射線量を確認するため定期的に航空モニタリングを実施している。自然減衰や風雨による放射性物質の移動などで、県内の放射線量は減少が続いている。
 事故発生から時間がたつにつれ、福島第一原発の北西に広がっていた線量の高いエリアが縮小している。事故から30年後の平成53年3月の放射線量の予測は現在と比較して、おおむね4分の1程度にまで下がるとみられている。


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