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(45)技を極める ITをがん治療に

会津若松市で開かれたテデックスで司会を務める会津大生。アイズ・ジャパンが運営を支えた

 会津若松市のIT企業「Eyes,JAPAN(アイズ・ジャパン)」は医療分野にも業務を広げている。
 唾液内のタンパク質の成分を調べ、微小ながん細胞がある部分を特定して早期の治療につなげるシステム開発だ。信州大医学部(長野県)と平成27年度に共同研究をスタートさせた。社長の山寺純(48)は「完成すれば、救われる命が増え国全体の医療費削減にもつながる」と意欲を燃やす。
 ITベンチャー企業として、約20年間走り続けてきた。常に新しい挑戦を忘れなかった成果がまた1つ、表れようとしている。

 膵(すい)臓がんなどは完治が難しい状態で見つかるケースも少なくない。初期の段階で発見できれば、治癒率は大きく跳ね上がると期待されている。
 こうした中、唾液を分析しがんが発症している場所を特定する研究が盛んになった。関連する論文約20万件が学会に提出されているという。アイズ・ジャパンと信州大の早期発見システムは患者の唾液を調べ、こうした論文の中から成分が類似している事例を人工知能を使って抽出し、がんの位置を特定する。
 人工知能に20万件の内容を理解させるだけで半年かかるが、今年度末までにシステムを完成させる予定だ。現在、信州大付属病院と国立がん研究センターで最終試験を行っている。
 アイズ・ジャパンは12年から、ITを医療に活用するためイベントを開いてきた。この取り組みを知った民間最大手のシンクタンクの関係者が信州大と橋渡しをした。

 会津大が認証する同大発のベンチャー企業は9月末時点で17社。アイズ・ジャパンは19年2月に初めて認証を受けた7社のうちの1つで、「老舗」的な存在だ。産学連携によって業務の幅を広げてきただけに、地域活性化への協力も惜しまない。
 古里の価値を再発見しようと、9月18日に会津若松市で初めて開かれたイベント「TEDx(テデックス)」。アイズ・ジャパンは実行委員会の代表を務めた会津大生を支え、農業者や県立博物館関係者らによる発表をユーチューブで世界に発信した。
 こうした取り組みを市長の室井照平(61)は「約20年もの長い期間、グローバルな分野で頑張り、地域に大きく貢献している」と評価する。
 山寺は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で傷ついた古里の復興の力になりたいと誓う。「会津でこれからも挑み続けていく」と決意は固い。(文中敬称略)

カテゴリー:明日に挑む-芽吹く福島の力

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