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(47)技を極める 魅力伝え質高める

陶器を前にフランスの芸術家らと交流する陶(右)

 「とても美しい」。外側と内側が二重構造になっている大堀相馬焼独特の「二重(ふたえ)湯飲み」が出来上がると、来場者から感嘆の声が漏れた。
 フランス南部の街バンドールで平成24年4月に開かれた芸術イベント。浪江町の大堀相馬焼・陶徳(すえとく)窯の11代目、陶(すえ)正徳(42)は東日本大震災の被災者支援団体の企画で現地を訪れ、約300人の観衆を前に300年以上続く伝統の技を実演した。
 東京電力福島第一原発事故によりさいたま市に避難していたため、粘土に触れたのは1年ぶりだった。初めて訪れた異国で大きな拍手を浴び、新鮮な感動に包まれた。日本からスーツケースに詰めて持ち込んだ花瓶やコーヒーカップがすべて売れた。「自分自身、古里に根付く伝統工芸の素晴らしさを再確認できた」と振り返る。

 バンドールでのイベントをきっかけに現地の芸術家との交流が生まれ、これまでに合わせて4回訪欧した。1カ月から3カ月ほど滞在し、彼らのアドバイスを受けながら、従来の大堀相馬焼にはなかったピンクや青色を取り入れた新作に挑戦した。日本にはないヨーロッパ独特の陶芸の製法に刺激された。歴史を積み重ねた美しい町並みなどにも引かれたという。原発事故という苦難が続く中、創作を続ける意欲がわいた。
 フランス人との付き合いが深まる中で、現地への移住を進められた。だが、郡山市の借り上げ住宅の一角に工房を構えていた父富治(75)や、存続の危機に立つ大堀相馬焼のため県内で活動すると決意した。

 福島を代表する大堀相馬焼の窯元は最盛期の江戸末期、100軒を超えていたという。しかし、次第に他の産地との競争が激しさを増した。後継者不足も重なり、平成に入ってからは25軒程度にまで減った。原発事故後に再開したのは10軒程度にとどまっている。
 こうした状況の中、陶には大堀相馬焼の魅力を1人でも多くの人に伝えたいとの思いが芽生える。郡山市の工房で今年6月、陶芸教室を始めた。地元の主婦らが思い思いに作品を仕上げて満足する顔を見るのが新たな楽しみだ。生徒たちの疑問に答えるのも、作品を仕上げる上でのヒントになっているという。
 「大堀相馬焼の伝統を守り抜く。さらに、新たな作風を取り入れ、皆さんに喜ばれる質の高い作品を作っていきたい」と誓う。挑戦は続く。(文中敬称略)=終わり=

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