22日に東京・両国国技館で行われた大相撲初場所14日目で、福島市出身で荒汐部屋の「大波三兄弟」がいずれも勝ち越しを決め、著しい成長ぶりを古里に示した。東前頭筆頭の三男若隆景関(27)=本名・大波渥さん=は八勝六敗として来場所の三役復帰を確実にし、東前頭15枚目の次男若元春関(28)=本名・大波港さん=は八勝六敗と新入幕の場所で確かな実力を証明した。東幕下17枚目の長男若隆元(30)=本名・大波渡さん=は四勝三敗で今場所を終えた。全員勝ち越しは二場所連続。関係者は23日の千秋楽での有終の美を願った。
■父政志さん「よくやった」 県内で期待・祝福の声
大波三兄弟の勝ち越しに、県内の関係者はさらなる飛躍を願った。
父政志さん(54)=元幕下若信夫=は、経営する福島市の料理店「ちゃんこ若葉山」で取組を見守った。若隆景関が勝ち越しを決めると「よくやった」と手をたたいて喜んだ。今場所の息子3人の相撲内容を評価した。一方で「来場所の番付を考えれば、もう一番勝ってほしい」と、千秋楽に取組がある若隆景関、若元春関に白星締めを期待した。
テレビ観戦した後援会の渡辺博美会長(75)=福島商工会議所会頭=は「地元に大きな元気を与えてくれた」と感謝した。「新型コロナが落ち着いたら、会場で声援を送りたい」と話した。
学法福島高時代に二人を育てた同校相撲部顧問の二瓶顕人教諭(36)は「これからも自分の相撲を信じて頑張ってほしい」と激励した。県相撲連盟の宮田弘幸会長(67)は「三兄弟そろって関取となり、さらなる活躍を期待したい」と力を込めた。
相撲ファンからも喜びの声が上がる。いわき市の自営業緑川健さん(53)は「頑張っている姿をずっと見てきた。魅せる相撲でさらに高みを目指してほしい」と期待を寄せた。
三兄弟で出世頭の若隆景関は、東前頭13枚目の千代丸関(30)と互いに勝ち越しを懸けて戦った。立ち合いで相手が右に変化しても前に落ちない。素早く左を差し、一気に寄り切った。「下から低く攻められた。ホッとしている」。昨年7月の名古屋場所以来、四場所ぶりの返り三役を手中に収めた。
今場所は上位相手の4連敗スタートから盛り返した。4勝6敗から4連勝を飾った。再入幕した2020年7月の名古屋場所以降、九場所(休場一場所を除く)のうち七場所で勝ち越すなど、着実に力を付けている。昨年11月の九州場所は西前頭筆頭で八勝七敗だったが三役返り咲きに届かず。仕切り直しの好機で、文句なしの結果を残した。
千秋楽の結果次第では、祖父の元小結若葉山を超える新関脇も視界に入る。「まだ一番あるので、あしたも集中していきたい」と気を引き締めた。
新入幕の若元春関は西前頭八枚目の翔猿関(29)と相まみえた。十両時代に3戦勝ちなしだった難敵に対し、左の強烈なおっつけで優位に立った。胸が合い、得意の「左四つ」になれば、つかんだ上手が一枚でも十分。前に出て、投げ捨てるように寄り切った。
新入幕は一族にとって鬼門だった。祖父の若葉山は1947(昭和22)年夏場所(10日制)で4勝6敗と負け越し。若隆景関は2019(令和元)年九州場所で4連勝の後に、右足のけがで休場を強いられた。「チャレンジするぐらいの気持ち」で臨んだ新年最初の場所で堂々たる取り口を見せた。
中日の16日からは、祖父と同じ獅子のデザインを施した化粧まわしで土俵入りした。この日は花道で弟の若隆景関を待ち構え、笑顔で話し掛けた。「3人で勝ち越せたのはうれしい」と喜びに浸った。
東幕下17枚目の長男若隆元(30)=本名・大波渡さん=は、霧の富士(27)と3勝3敗同士の一戦。立ち合いから頭を付け、勢いよく押し出した。二場所連続の勝ち越しで、来場所は十両昇進の可能性が見える幕下15枚目以内に上がる見通しだ。