「今後もライバルとして福島県内のサッカー界を盛り上げてほしい」。4日に福島市のとうほう・みんなのスタジアム(県営あづま陸上競技場、とうスタ)で行われた明治安田生命サッカーJ3の福島ユナイテッドFC(福島U)対いわきFCの「福島ダービー」には、福島Uのホーム戦で過去最多の4501人が詰めかけ、スタジアムを両チームのシンボルカラーの赤に染めた。選手は試合終了の笛が鳴るまで懸命にプレーし、大声援に応えた。
4501人の来場者数は、これまで最多だった2014(平成26)年8月3日の福島U-SC相模原戦で記録した4163人を上回った。
福島市の会社経営高橋智弘さん(56)はこれまで数回、福島Uの試合を観戦したことがあるが、「これほど盛り上がったのは初めての経験」と驚いた。「今後も熱気が続けば、県内のサッカー人気も高まるはず」と期待した。
10年以上福島Uの応援を続けている同市の会社員遠藤春夫さん(54)は「ダービーでの敗戦がこんなに悔しいとは」と初めての感情を抱いた様子。「選手はいい動きをしてくれた。次の試合も期待できる」と息をのむ一戦を満喫した。
いわき設立当初から応援しているいわき市の会社員高羽利典さん(62)は「両サポーターが一体となって応援する光景は最高だった」と興奮した様子だった。「これからも互いに高め合い、本県を元気にしてほしい」と思いを託した。
同市の会社員上遠野希心(のぞみ)さん(28)は「相手の応援に圧倒された」と目を丸くした。次のJ3の福島ダービーはいわきのホームで行われる。「サポーターとクラブが一体となって雰囲気をつくり、相手を迎えたい」と意気込んだ。
子どもたちも歴史的な一戦に目を輝かせた。福島市の番匠陽音(はると)君(10)は「迫力ある試合で楽しかった。自分も将来プロを目指したいと思った」と熱心に選手の動きを目で追っていた。
■両チーム主将コメント 福島U・諸岡選手「選手として幸せ」 いわき・山下選手「熱い戦いできた」
選手はサポーターの声援を受けてピッチを全力で駆け回り、果敢にゴールを狙った。
福島Uは1点に泣いたが、試合終了間際までゴールに迫った。MF諸岡裕人主将(25)は加入から4年目を迎え、初めて4000人を超えるサポーターの前で戦った。「選手として幸せな空間だった」と振り返った。
体を張ったプレーで攻守に躍動したが、「サポーターに悔しい思いをさせてしまった自分に腹が立つ。頑張ってレベルを上げていく」と次戦以降の勝利を誓った。
いわきは90分間止まらず、倒れないプレーで勝利をもぎ取った。MF山下優人主将(25)は「1個のボールを本気で追いかける熱い戦いができた」と胸を張った。
決勝点は山下選手が蹴ったコーナーキックから生まれた。「大勢のサポーターが見守る中でいいプレーが生まれた。両チームの選手が尊敬し合いながら、負けられない試合を続けていきたい」と言葉に力を込めた。
■8日再び対戦 天皇杯県選手権決勝で とうスタ
福島Uといわきは、天皇杯JFA第102回全日本サッカー選手権の県代表を決める福島民報杯・NHK杯第27回県サッカー選手権大会決勝で対戦する。試合は8日午後1時から、とうスタで行われる。
J3での再戦は8月20日午後4時半から、広野町のJヴィレッジスタジアムで行われる予定。
※福島ユナイテッドFC 有志が県内にJリーグチームをつくることを目指し、2002(平成14)年に「福島夢集団」として設立。2008年に福島ユナイテッドFCに改称した。東日本大震災などでクラブ消滅の危機に陥ったが、県民らの支援もあり、存続した。2014年に本県チームで初めてJ3に参入した。
※いわきFC 2012(平成24)年に創設された。2015年、ドーム(本社・東京都)が株式会社いわきスポーツクラブを設立し、運営を担った。2016年に本格始動し、今季からはJ3で戦っている。いわき、広野、楢葉、富岡、川内、大熊、双葉、葛尾の各市町村をホームタウンとして活動し、浜通りの復興を後押ししている。