世界で活躍する選手を育てる―。2022(令和4)年度の大学三大駅伝で3冠に導いた駒沢大監督の大八木弘明さん(64)=福島県会津若松市河東町出身=と、4月に監督を受け継ぐ藤田敦史さん(46)=福島県白河市東出身=は1日、福島民報社のインタビューに共通する思いを語った。藤田さんは「重い責任を感じるが、大八木監督の熱意を引き継いでいく。福島の人を笑顔にするチームを作る」と誓った。
藤田さんは昨年の大みそか、都内にある駒大陸上部の寮「道環寮」の一室で、大八木さんと2日後に迫った東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)の区間配置について話し合っていたという。出場選手が決まり一息つくと、大八木さんから「俺は来年、(監督を)やらない。あとは好きにせえ」と声を掛けられた。突然の監督交代宣言。藤田さんは「信頼されているうれしさと、これまで大八木さんが築き上げたチームを引き継ぐ重圧を感じた」と振り返る。
藤田さんが駒大の門をたたいた1995(平成7)年、大八木さんが母校にコーチとして戻ってきた。素質を見込まれ、別の練習メニューを与えられるなどして一流選手に育ててくれた。卒業後にはマラソンの当時の日本記録を樹立。「監督として駅伝を制して恩を返したい」と表情を引き締める。
選手との対話を重視する大八木さんの指導法を引き継ぐつもりだ。「完璧なチーム作りを間近で見てきた。まずは経験を積み、その後に自分の色を出していけたら」と語る。大八木さんが自分を見いだしてくれたように、選手の力を引き出せる指導者になりたいと願う。スカウトを強化し、福島県の選手の発掘にも力を入れる。
大学駅伝では、同学年である東洋大の酒井俊幸監督(46)=石川町出身=らが指導者として活躍している。藤田さんは「福島県出身監督同士がトップレベルの大会で競うことで、福島のみんなを元気付けたい」と誓った。
総監督となり一線を退く大八木さんは、教え子でエースの田沢廉選手(22)の指導を続け、世界選手権や五輪を狙う。今月、海外で始まるトレーニングに同行し、3月の大会出場を目指す。
チームを任せられる藤田さんの存在が、トップ選手の育成に集中して取り組む新たな挑戦を後押ししたという。藤田さんには「子どもたちの人間性を高めるように育ててほしい」と注文した。
中学生を中心に、全国で好成績を残す福島県選手が増えてきたと感じる。「ふくしま駅伝(市町村対抗県縦断駅伝競走大会)など、福島には中高生の刺激になる大会がある」と語る。「福島から、世界で活躍するランナーが出てほしい。私も子どもたちに感動を与えるような取り組みをしたい」と展望を語った。