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国内トッププロチーム主将・米元瑛さん(福島県西郷村出身) 9月アドベンチャーレースに挑む 夢は世界一の冒険家

2025.03.17 10:35

 福島県西郷村出身の米元瑛(あきら)さん(31)=群馬県みなかみ町=は「世界一過酷」とされる「アドベンチャーレース」に国内プロチームの一員として挑んでいる。競技は水陸のアウトドア種目をこなし、数日間で数百キロを走破する。幼少期から古里の山に親しみ、会社員を経てプロの世界に飛び込んだ。練習生から努力の末に主将となった。悲願の頂点を目指し、世界選手権(9月、カナダ)に臨む。「世界一の冒険家を目指す」と情熱を燃やしている。


■大自然相手、命の危険も

 米元さんは2018(平成30)年に国内トッププロ「Team EAST WIND(チーム・イースト・ウインド)」に練習生として入り、欧州や南米で催された10大会に参戦してきた。総距離や所要日数は大会により異なるが、山岳や河川、海などを舞台に500~800キロを1週間前後で進む。完走までの時間は100時間を超える。

 未舗装の急峻(きゅうしゅん)な山道や勢いよく流れる急流…。マウンテンバイクやオール、テントなどの装備を携え、メンバーが一丸となって難路を進む。食事や睡眠の間もタイムは進むため、寝る間も惜しんで先を急ぐ。心身の疲労が極限に達し、幻覚や幻聴に見舞われることも。自身も2022(令和4)年9月にパラグアイで開かれた世界選手権ではレース中に気を失い、ヘリで運ばれた。

 命の危険さえある勝負の醍醐味(だいごみ)は、厳しい環境に立ち向かう仲間との連帯感と完走時の達成感だ。ゴールの瞬間にはさまざまな感情が湧き、涙が止まらない。「今回で最後と思うこともある。努力の過程を思い出すと踏ん張れる」と精神面のタフさを鍵に挙げる。


■「県民に勇気と感動を」

 幼い頃から大自然に囲まれて育った。小田倉小5年時、村内の国立那須甲子青少年自然の家で催された10泊11日の野外生活プログラムに参加。那須登山や沢登りを通し、アウトドアの魅力に触れた。西郷二中、白河高に進んでからもキャンプやサイクリングに親しんだ。

 白河高3年生の頃、動画を見たのがアドベンチャーレースとの出合いだ。「趣味を究めれば自分も選手になれるのでは」。ほのかな憧れを抱え、弘前大理工学部に進んだ。大学では探検部に所属し、八甲田山など国内の名峰を踏破した。

 競技者として生きる決心がつかず、卒業後は機械設計の会社に入った。2年ほど働いたが、イースト・ウインドの活動を追う間に冒険心が再燃した。「どうせやるなら、日本で一番有名なチームで」と関係者に連絡。練習生となり、5年ほど鍛錬を積み、正規メンバーに認められた。普段はチームが拠点を置くみなかみ町でラフティングガイドなどをしながら練習に励む。

 チームの国際舞台での最高成績は2022年5月に米国であった大会の2位だ。最高峰の舞台となる世界選手権には各国の強豪100チームほどが集う。「レースに挑む姿を通し、県民はじめ見る人に困難に向かう勇気と感動を届けたい」と意気込んだ。


※アドベンチャーレース 世界各地の山や川、海などを舞台に、トレッキングやマウンテンバイク、ラフティングなど多くのアウトドア競技をこなしながら数日間で数百キロ先のゴールを目指す長距離レース。チームは男女混合の4人で編成し、離れずに行動する。電子機器は一切使えず、コースの下調べはできない。長丁場のレースを耐え抜く体力とチームワーク、コンパスと地図を頼りに最適、最短のルートを見いだす分析力が求められる。天候を問わず開催され、中止になることはない。