X メニュー
福島のニュース
国内外のニュース
スポーツ
特集連載
あぶくま抄・論説
気象・防災
エンタメ

大飯食らい(9月13日)

2025.09.13 09:16

 むかしむかし、ある村に八左衛門という男がいた。大飯食らいだが、たいそうな力持ち。評判を聞いた名主に「飯は食い放題、手当は十人前」という破格の待遇で雇われる▼畑一枚を軽く耕す働きぶりに、名主は喜ぶ。かたや、台所を預かる女将は大食いが気に入らない。「飯が仕事をするんだ」と愚痴をこぼす。人づてに小言を耳にした八左衛門は翌日、畑を半分ほど耕すと弁当を置いて帰ってしまう。女将に行いを責められると、「今頃、飯が耕しているよ」とやり返す―。「まんが日本昔ばなし」に登場する。食と力仕事は切っても切れぬ▼昔話の女将も、ますます困り果てただろう。家計に食費が占める割合を示す「エンゲル係数」が、歴史的な高水準と報じられた。福島市など全国37都市で最高値を更新した。年内に値上げが見込まれる食品は、2万品目を超えるとの調査もある。物価高は収束を見通せず、日々の食卓のやり繰りに気苦労が募る▼暮らしの支援は夏の参院選で最も大きな争点となった。約束を忘れたか。かの政党は看板の掛け替えで忙しさを増す一方。「打算や下心が仕事をするんだ」。そんなお小言もちらほら。永田町の八左衛門なら、どう言い返す。<2025・9・13>