東日本大震災アーカイブ

若い力で震災克服 県内の自然、歴史叙情豊かに 

「花見山」で書道吟を行う生徒

 7日に閉幕した第35回全国高校総合文化祭(ふくしま総文)では、参加者が全国の同世代の仲間と交流できたことを喜ぶとともに、「震災で準備に苦労したが、実施できてうれしい」「参加できて本当に良かった」など感動の声を上げた。6部門で閉会式などを行い、本県生徒が次回開催の富山県の生徒に思いをつなげた。
 吟詠剣詩舞部門では、本県の13校29人の生徒が構成吟「ふくしま吟紀行」を披露した。今大会が総文初出場となったが、県内の美しい自然、歴史を余すところなく表現した。会場からは大きな拍手と共に「頑張って」と励ましの声が寄せられた。
 ふくしま吟紀行は独吟、剣舞、書道吟、舞吟、連吟で演じられた。高村光太郎の智恵子抄の一文や、福島市の花見山を歌った「花見山偶成」、八幡太郎義家が奥州平定に向かう途中、勿来の関を通った際に詠んだ「八幡公勿来の関を過ぐる図」など、中通り、浜通り、会津地方ごとに吟詠や舞で名所や歴史をたどった。
 本県にはこれまで、吟詠剣詩舞の高校の専門部会はなく、今大会に合わせて設けられた。小学生の頃などに吟詠の習い事をしていた生徒らを集め、出演にこぎ着けた。ほとんどの生徒は別の部活動との掛け持ちで、練習時間もままならず、加えて東日本大震災の影響で2カ月程度は一緒の練習ができなかった。
 ただ、昨年、プレ大会を開催していたことから、「なんとか本番で演技を披露したい」とそれぞれ、集中して稽古を重ねた。
 舞吟に出演した渡辺真帆さん(17)=磐城二年=、橋本麻希さん(17)=磐城桜が丘三年=、沢田加奈さん(16)=同二年=は「無事に演技を終えることができて良かった。復興への弾みになれば」と笑顔を見せた。
 講師として専門部設立から生徒の指導まで尽力した県吟剣詩舞道総連盟の高橋稔さん(70)は「素晴らしい演技を披露してくれた。終わった瞬間、涙が込み上げた」と感激していた。