東京電力福島第一原発事故で、政府の原子力災害現地対策本部は3日、局地的に放射線量が高く、住民に自主的な避難を促す特定避難勧奨地点に、新たに南相馬市の65地点(72世帯)と川内村の一地点(一世帯)を追加指定した。南相馬市は先月21日に指定された57地点(59世帯)と合わせ122地点(131世帯)になった。川内村の指定は初めて。県内の避難勧奨地点は伊達市の104地点(113世帯)を含め227地点(245世帯)に拡大している。
■住民、対応に疑問や不安 南相馬
南相馬市で追加指定されたのは、鹿島区橲原(じさばら)の一地点(二世帯)、原町区大谷の三地点(三世帯)、大原の18地点(19世帯)、高倉の九地点(11世帯)、押釜の三地点(三世帯)、片倉の二地点(二世帯)、馬場の29地点(32世帯)。
放射線量が毎時3・1マイクロシーベルト以上の場合、原発事故から1年間の積算線量が20ミリシーベルトを超えると推定。662地点を調べた結果、年間20ミリシーベルトを超える地点はなかったが、高校生以下の子どもや妊婦がいる世帯を指定した。先月21日に指定された橲原、大谷、大原、高倉で地点が増え、新たに押釜、片倉、馬場の地点が指定された。避難勧奨に応じると診療費の一部免除や国民年金保険料の減免などの支援が受けられる。
7日からは指定された65地点(72世帯)を含む追加モニタリングが行われた681地点(698世帯)を対象にした原子力対策本部と市災害対策本部の説明会がスタートした。
鹿島中体育館で開かれた初日の説明会では、文部科学省などが追加モニタリングの結果や健康への影響、特定避難勧奨地点の考え方と支援策などについて説明した。
質疑応答では、住民から「文科省は放射線量が低い所ばかりを測っている」「人が住んでいない所はもっと線量が高い」「市は本当に子どものことを考えているのか」など疑問や不安の声が続出した。
川内村は下川内字三ツ石・勝追の一地点(一世帯)。村は既に全村避難しているため、指定の対象世帯に住民は住んでいないが、注意喚起のため指定された。
■制度見直し要望 地域社会の分断懸念 伊 達
伊達市は四地区、104地点(113世帯)が特定避難勧奨地点に指定されている。
内訳は市内霊山町の上小国地区が30地点(32世帯)、下小国地区が49地点(54世帯)、石田地区が19地点(21世帯)、月舘町相葭(あいよし)地区が六地点(六世帯)。
8日現在、避難を希望しているのは75世帯(十世帯は伊達市の独自支援で避難済み)。とどまることを決めているのは33世帯、保留・未確認は三世帯。住居が決まった世帯から避難している。
一方、住民らは住居ごとの指定では地域が分断され、コミュニティーが壊れてしまうことを懸念。先月25日、小国地区の住民らが「特定避難勧奨地域」として地域全体を指定するよう制度の見直しなどを求める要望書を政府などに提出した。
14日からは局地的に放射線量が高い市内保原町富成地区で民家を対象にした詳細モニタリング調査が行われる。
※特定避難勧奨地点 計画的避難区域や警戒区域の外で、計画的避難区域とするほどの地域的な広がりはないものの、原発事故発生後1年間の積算放射線量が20ミリシーベルトを超えると推定される地点。住居単位で特定し、市町村を通じて個別に通知する。外出などでその地点を少し離れれば、線量が低くなるため、一律に避難を求めたり、事業活動を規制したりはしない。支援措置の対象となる。
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