東日本大震災アーカイブ

今を生きる 恩返し誓い再開 豪雨浸水や風評と闘う

水害から復旧し業務に励む塩田さん

■柳津温泉・花ホテル滝のや 塩田恵介さん
 柳津町柳津温泉の花ホテル滝のやのフロントで、代表の塩田恵介さん(51)が予約の電話を受け付ける。原発事故の風評被害と闘う最中、7月末の集中豪雨で床上浸水した。休業から1カ月以上たち、13日までに再開にこぎつけた。
 「奥会津の温泉旅館として本県の復興に貢献したい」。近隣の同業者有志と奥会津温泉郷協議会をつくる塩田さんは原発事故直後、協議会の旅館と連携して格安料金を設定し、自主避難者を受け入れた。4月からは2次避難所として葛尾村からの避難者を迎えた。
 夏休み以降は原発事故の風評被害を乗り越えようと、町内の旅館挙げてキャンペーンを繰り広げてきた。葛尾村の避難者が三春町の仮設住宅に移り、一般客の呼び込みに力を入れていたところ、水害に見舞われた。
 フロントや厨房(ちゅうぼう)などがある1階が床上90センチまで浸水した。周辺の旅館では最も深刻な被害を受けた。8月以降の予約を全て断念した。途方に暮れたが、多くのボランティアが救いの手を差し伸べた。
 塩田さんは地域おこしに役立てようと10年前から月1~4回、ミニ講演会を開いてきた。長年の活動を通じてできた人の輪で、県内外から延べ約100人が復旧に協力した。2次避難で利用していた葛尾村の住民が三春町の仮設住宅から駆け付けたこともあった。
 「こんなに周囲からお世話になったことはない」。塩田さんは感謝をかみしめる。9月の講演会までには営業を再開しようと目標を決め、何とか間に合わせることができた。
 「震災と水害で県内全域でダメージを受けた。しかし、くよくよしてばかりはいられない。再び立ち上がることが、お世話になった皆さんへの恩返し」。被災者を癒やし、本県の元気を発信する場にしようと意気込む。

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